2022 年度実施状況報告書

「肯定的な数学的アイデンティティ」の形成を目指した小学校教員養成プログラムの開発

研究課題

研究課題/領域番号	20K02553
研究機関	武庫川女子大学
研究代表者	神原一之武庫川女子大学, 教育学部, 教授 (80737718)
研究分担者	矢野裕俊武庫川女子大学, 教育学部, 教授 (80182393) 神山貴弥同志社大学, 心理学部, 教授 (00263658)
研究期間 (年度)	2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード	数学的アイデンティティ / 小学校教員養成 / 実践的指導力
研究実績の概要	本研究は，日本，アメリカ合衆国，フィンランドの3ヵ国の小学校教員養成カリキュラム（算数・数学科関連科目）における「肯定的な数学的アイデンティティ」の形成に関する資料の包括的な資料の収集・調査を行い，小学校数学教員養成における「肯定的な数学的アイデンティティ」の形成に資するプログラムを提案することを目的としている。令和4年度は，（1）数学的アイデンティティに関する縦断的調査をA私立大学で継続して行うとともに，（2）算数関連科目のプログラム開発にむけた授業研究会の開催、来日が可能であれば，フィンランドとアメリカ合衆国からの研究者の招聘、（3）コロナ禍の状況により両国の研究者の来日が難しい場合には，来日可能で本研究の目的を損なわない範囲でイギリスの研究者と共同研究を開始することを計画していた。その結果，次のような成果を得た。（1）の成果について，小学校教員志望学生の算数・数学学習に対する「消極的な思い」の3つの水準，「消極的な思い」が生起する5つのカテゴリー，「消極的な思い」が影響を与える7つのカテゴリーなどを抽出したこと，学校教育において，「消極的な思い」が生起する小5・高1に壁があることを念頭に置き，重点化・焦点化をはかった計画を立てて，細やかな指導を行うことを指摘したことがあげられる。（2）の成果について，2022年10月，2023年1月の2回に渡ってに国内の研究者3名により授業研究会を開催し，算数科内容論の授業のあり方について検討を加えた。この取り組みは，学内の学長表彰「授業改善奨励賞」を得ることにつながった。（3）イギリスエクスター大学を訪問し，教員養成のあり方，算数関連科目の実践のあり方について情報を得ると共に，今後の共同研究の方向性を確認することができた。
現在までの達成度 (区分)	現在までの達成度 (区分) 3: やや遅れている理由令和4年度は，（1）数学的アイデンティティに関する縦断的調査をA私立大学で継続して行うとともに，（2）算数関連科目のプログラム開発にむけた授業研究会の開催、来日が可能であれば，フィンランドとアメリカ合衆国からの研究者の招聘、（3）コロナ禍の状況により両国の研究者の来日が難しい場合には，来日可能で本研究の目的を損なわない範囲でイギリスの研究者と共同研究を開始することを計画していたが、このうち（2）に関わって，フィンランドとアメリカの研究者との共同研究はコロナ禍以前に当初予定したようには進まなかった。しかしながら、そのことも考慮しながら（3）で計画したようにイギリスの研究者の協力を得ることができ、研究目的に迫る取り組みができている。
今後の研究の推進方策	令和5年度は、次の3点を中心に研究を推進する。（1）数学的アイデンティティに関する縦断的調査をA私立大学で継続して行うとともに，イギリスにおいて同様の調査を行い比較し分析を行う。（2）算数関連科目のプログラム開発にむけて国内外の算数・数学教育研究者との授業研究会（今年度は算数科教育法を中心とする）を開催し、イギリス・アメリカの研究者の招聘を進める。（3）国内の大学・学校,イギリス（もしくはフィンランド・アメリカ）の大学・学校を訪問し，「肯定的な数学的アイデンティティ」の形成に関する資料の包括的な資料の収集を行う。令和4年度の取り組みと上記（1）（2）（3）の成果を合わせて日本数学教育学会などで発表する予定である。
次年度使用額が生じた理由	令和2年度，令和３年度実施予定であった対面による海外研究者よの研究会議と授業研究がコロナ禍のため開催することができなかったこと、合わせて令和4年度もアメリカ・フィンランドからの研究者の招聘が実施できなかったことによる累積で，1,170,173円の次年度使用額が生じた。令和5年度は,数学的アイデンティティに関する国内の縦断的調査およびイギリス（可能であればアメリカ・フィンランド）における調査に係る人件費・謝金,算数関連科目のプログラム開発に向けた授業研究会開催に係る国内外の研究者招聘に係る旅費・人件費・謝金,国内外における包括的な資料収集のための物品費・旅費等に使用する計画である。