研究課題/領域番号 |
20K02554
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研究機関 | 山口学芸大学 |
研究代表者 |
松村 納央子 山口学芸大学, 教育学部, 准教授 (50341136)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | フレーベル / 言語 / 教授 / 自己教育の立方体 |
研究実績の概要 |
本研究の課題は、就学前教育と初等教育とが断絶することなく展開される教育論を展開したフレーベルの議論、とりわけ言語教授に関する議論に着目し、学ぶ者(子ども)の内的変化の過程と教育者との関わりの過程との原理的考察としてその枠組みを明らかにすることを目的としている。フレーベルは最晩年である1852年に「媒介学校(Vermittelungsschule)」について論じたが、ここで用いられている「学校」という語は単に教育施設としてではなく、遊びから教授へと主要な教育の形態が変化する時期ないしは場を意味している。「媒介学校」の段階においては、子どもは(1)事物そのもの、(2)事物相互の関係、(3)事物それぞれの成り立ちと発展の様相、(4)事物のその後の働きの継続を、事実と行動そのものを通じて直接学ぶ、という4段階の教授が想定された。そして、この4過程において、子どもの内的世界にあっては(1)「直観」から「理解」へ、(2)「理解」から「行動」へ、(3)「行動」から「言葉による表示」へ、(4)「言葉による表示」から「行動によって現れたものの正しい表示」へと進むことが想定されている。この過程において言語が一定の役割を担うことが暗示されているが、その全体像は1852年の著作には現れていない。そこで、翻ってフレーベルが教授論の確立に専心していた1820年代から1830年代に遡及し、彼の言語教授論を再構成する。 研究初年度である2020年度は、フレーベルの1820年代から1830年代前半の資料を中心に言語論や言語教授に関わる議論を検討した。ホフマン編集版の『人間の教育』(1826=Hoffmann 1982)やハイラント編集による「ヘルバ・プラン」(1827-1829=Heiland 1993)ならびに「自己教育の立方体」構想(1837=Heiland 1993)を手がかりに、フレーベルの事物教授(基礎陶冶)が言語を媒介としていること、その言語が常に対話形式を想定していることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画では各種学会での情報収集、ドイツの図書館・公文書館での資料収集を予定していたが、コロナ禍により次年度以降に先送りしている。 一方で、既刊の原典批判を伴った編集版を再読し、「自己教育の立方体」構想のような試作品製作まで進みつつも後の教育遊具(恩物)シリーズには含まれなかった陶冶材についての概要をまとめることができた。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍により、ドイツ語圏での資料収集については2021年度も限定的となることを想定している。そこで、2021年度は資料批判を伴った編集版であるホフマン編集版やハイラント編集版に収められている草稿類を中心とした資料の読解に努める。さしあたっては1830年代の資料を中心に、引き続き「自己教育の立方体」についてフレーベルの着想や論の展開を検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症感染拡大のため、計上していた旅費、人件費・謝金、その他経費は支出しなかった。また、物品費に関しては資料のデータ化のための物品を含んで計上していたが、ドイツでの資料収集が不可能であったため該当する物品購入を見合わせた。
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