研究課題/領域番号 |
20K02554
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研究機関 | 山口学芸大学 |
研究代表者 |
松村 納央子 山口学芸大学, 教育学部, 教授 (50341136)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | フレーベル / 言語 / 就学前教育 / 教育遊具 / 母の歌と愛撫の歌 / 図像 |
研究実績の概要 |
本研究の課題は、就学前教育と初等教育とが断絶することなく展開される教育論を展開したフレーベルの議論、とりわけ言語教授に関する議論に着目し、学ぶ者(子ども)の内的変化の過程と教育者(両親・教師)との関わり・配慮の過程との原理的考察としてその枠組みを明らかにすることを目的としている。 フレーベルが1820年代カイルハウでの教育舎運営において既に就学前の子どもを対象とした教育についても考察していたことは刊行資料を基に読解が進んでいる。また、1830年代スイスでの活動時に乳幼児の遊びを観察・分析し、遊びの体系化に着手したことも書簡等から判明している。令和3年度は、フレーベルの著述から乳幼児期における言語習得の諸過程ならびに教育者から乳幼児への関わりの諸相を抽出・分析するため、第1から第3の教育遊具(恩物)頒布時の付録印刷物、1844年印刷の小冊子「幼児のボール遊びの発展」ならびに同年発刊『母の歌と愛撫の歌』の図像と詩に着目し、近年の研究動向をふまえつつ資料の読解に努めた。文章のみで教育論を展開していた1820年代の著作(当時の出版資料)と比較して、就学前教育に専心した1840年代においては子どもと教育者との対話による活動の展開・進行過程が示された教育論となっている。フレーベルは視覚を働かせる教育遊具や図像とそれに関連する言語とを併記することにより、乳幼児の言語獲得のみならず教育者側が言語をどう発するか、また乳幼児も言語によって応答する様子を提示し、その方法や配列についても精緻化しようとしたことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
資料収集については、コロナウイルス感染症拡大の状況からドイツの図書館・公文書館での資料の調査・収集を見送った。特に一次資料(手稿)に関してはオンライン公開がなされていないため、当初の計画通りに研究を進めることが難しくなった。 また、編集版の再読による考察を進めたものの、その成果の公開についてはコロナ禍により公開を予定していたものが遅延した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き関連する資料・文献の収集と分析を中心に研究を進める。海外出張については慎重にその時期を検討するが、当面刊行資料ならびにオンライン公開されている資料を活用し、言語をフレーベルの教育・教授・遊戯論における就学前教育と初等教育との架橋に資する学習者と教育者それぞれのプロセスの連関を明らかにする。具体的には、遊戯・教授の方法としての言語論についての解明、並びに遊戯・教授の対象・到達目標としての言語論の解明を進めたい。 また当初計画していたシンポジウムについては、国内の教育実践関係者を登壇者に迎え、歴史的視座に基づく研究から現在の就学前教育・初等教育の接続モデルを示す予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外への資料収集・学会参加のために旅費を計上していたが、当該年度も引き続きコロナウイルス感染症拡大の影響を受け実施できなかった。そのため一次資料(手稿)をデータ化するための物品も購入を見送り、資料整理に関連する人件費・謝金も生じなかった。今年度も引き続きコロナ禍による移動制限が予想されるが、移動が可能であれば海外への資料収集を行い、資料データ化のため必要な物品を購入する。 また、令和3年度は当初の計画通りシンポジウムを開催する。申請時の計画では海外から招へいする予定であったが、今年度のシンポジウムは登壇者として国内の教育実践関係者に依頼し、就学前教育と初等教育との接続についての現代的課題を踏まえ議論するよう調整する。
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