今日、世界的に「先進的」だと言われる国々の教育モデルが以前よりも容易に他の国に「トランスファー」、取り入れられるようになっているが、本研究では学校教育段階での日本の教育モデルの海外での展開(本研究で注目しているモデルを最初に民で取り入れようとしたマレーシア、インドネシア)に注目した。具体的には、1990年代から国際モデルとして展開されているレッスンスタディ(授業研究)モデルの後に、2000年代に展開されつつある日本の全人的な枠組みからの教育枠組み(日本の特別活動から派生してTokkatsuとしばしば言われる)に焦点化した。 だが、本研究が始まってすぐ、2020年には新型コロナウイルスが世界的に流行、各国で学校が閉まり、国境を越えた往来も止められた。だが、同時に学校が単に狭義の「勉強=教科」だけを教える場でないこと、子どもの社会性や感情の育成、つまり、社会情動的学習(social and emotional learning)が国際的に見直され、全人的な枠組みからの教育(holistic education)の重要性も再認識された。 本研究はこうした中、海外研究者の招聘は延期を余儀なくされながらも、2021、2022年度のオンラインのシンポや海外協力者のインタビュー、官の先進例であるエジプト関係者のインタビューを行なった。国境を越えた往来が可能になった最終年度2022年にはマレーシアからの海外協力者の来日、2022年9月には対面でマレーシア国際イスラム大学においてマレーシア、インドネシア関係者を含めた情報交換、シンポ、系列校における国際学級会の実施、イスラムのを含めた自国資源を用いたモデル化について議論された。レッスンスタディの国際学会WALSでTokkatsuモデルデー(基調講演、シンポ、日本特別活動学会有志ワークショップ)を設定、その成果を内外に発表した。
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