2020年度に実施した全日制と通信制の両方を設置している山口県の高校の生徒を対象としたアンケート調査と2021年度に実施した広域制通信制高校の生徒を対象としたアンケート調査のデータを用いて、通信制課程の広域制と狭域制に注目して全日制課程との比較分析を行い、2022年度に研究論文として公表した。分析結果から、通信制課程の高校生は、全日制課程の高校になじめないながらも学校的なメリトクラシーを受容し進路選択を行っていること、広域制通信制課程は全日制課程とほぼ同様に学校的なメリトクラシーの中で高等教育機関への進学を目指しているのに対し、狭域制通信制課程は学校的なメリトクラシー下で形成される自己の能力の認識が通信制課程の教育で変わることはなく、高校卒業後の進路が形成できない傾向にあること、広域制通信制課程において「学校の満足度(楽しさ)」が高いほどメリトクラシー意識が低いことが明らかになった。 以上の結果から、広域制通信制課程の高校生は、学校がつまらなくてもその現状を受容しながらメリトクラシーの意識を強くもって学校的メリトクラシーに再び参入しており、そのメリトクラシーの意識はアスピレーションの加熱装置ではなく、現状のつまらなさに帰属する冷却装置になっていることを示した。 さらに、2022年度は通信制課程の生徒が利用しているサポート校を対象に訪問調査及びアンケート調査を実施し、サポート校の進路指導の実態について分析し、研究論文として公表した。サポート校は大学進学を可能にするトラックの一つとしての機能を果たし、高等学校と同様の進路指導が行われていたが、障害を抱える生徒への対応、サポート校の運営や経営面の問題、人材確保の問題、生徒の経済的負担に関する問題、サポート校の認知・理解不足の問題等、多くの課題があり、サポート校の問題の構造を明らかにして改善に努める必要性があることを明らかにした。
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