最終年度の4年目においては、最終成果の発表を国内学会で1回、国際学会で2回行った。 ①比較教育学会では、ドイツと日本がそれぞれの高等教育をモデルとしてエジプトとトルコで展開する国際共同大学4校の、プロバイダー国のトランスナショナル高等教育の世界展開及びホスト国の高等教育システムの中における位置付け、ホスト国で期待される役割などについて検討した。データは、2022-23年に行ったエジプト・トルコにおける政府機関、大学等でのヒアリングと収集資料を中心とした。とりわけ、プロバイダー国として国際共同大学を強く推進しているドイツは、国際共同大学などの定義整理や類型化を積極的に行っており、強い主導性を発揮していることに言及した。 ②湾岸比較教育学会シンポジウムでは、エジプトとトルコに所在する日本とドイツの国際共同大学の持続的運営を維持するために不可欠となる、プロバイダー国とホスト国の間の考え方やアプローチの「べストミックス」の在り方の検討を踏まえ、オマーンの国際共同大学の事例に対する教訓や示唆について発表した。 ③アジア比較教育学会では、文部科学省科学技術・学術政策研究所による博士人材追跡調査を含むコロナ禍前の2019年までのデータを元に,近年の日本の博士教育の政策と実際の動向の中における在籍者の内訳の変化の要因と,これらの変化がもたらす日本の博士教育の役割への影響を探った。 研究期間全体の成果としては、コロナ禍で当初調査に制限はあったものの、これまであまり注目されてこなかった国際共同大学の持続的な運営の在り方(プロバイダー側とホスト側間のガバナンスや教育研究の摺り合わせなど)に関し、アジアと中東・アフリカにおけるドイツと日本の国際共同大学の比較調査からある程度明らかにすることができたことである。
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