研究課題/領域番号 |
20K02562
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研究機関 | 沖縄県立芸術大学 |
研究代表者 |
呉屋 淳子 沖縄県立芸術大学, 音楽学部, 准教授 (10634199)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 接触体験 / 学校芸能 / 民俗芸能 / レジリエンス / ソーシャル・ディスタンス |
研究実績の概要 |
現代社会において、地域とは決して一枚岩なものではなく、開発による生活環境の変化や人口流出など、様々な脆弱性を孕んだものでもある。社会の流動性が加速度的に高まっていく中で、かつては地縁や血縁で結ばれていた旧来の地域コミュニティのあり方も大きく変容している。その上で、申請者は、調査地である宮城県山元町(坂元)の事例から、変容し続ける地域社会における民俗芸能を考えるために、学校という場が地域文化の継承に果たす役割に着目し、特に、学校と地域の相互行為の中で刷新されながら継承される民俗芸能の実態を解明することを目的としている。 2020年度は新型コロナ感染症拡大の影響に伴い、調査地への渡航が制限され、学校への訪問1回、神楽保存会関係者への聞き取り調査2回のみの実施しとなったが、メールと電話、さらにzoomを活用しながらできる限り調査を実施した。 山元町立坂元小学校は、坂元神楽保存会、中浜神楽保存会の6名の指導者とともに、これまで地域文化の持続可能な発展に寄与するための取り組みを行ってきた。2020年度は、新型コロナ感染症拡大に伴う学習の難しさだけでなく、2021年2月13日に福島県沖で起きた地震によって被災するという状況から、子どもたちが地域の芸能を学校で学ぶことには、芸能の技そのものの継承以外に大きな意味があることが明確化した。子どもたちは芸能を学ぶこと、例えば、音楽を体で感じたり、記憶したり、「音楽する身体」として個人の身体へと内在化するこを通じて、地域で芸能を育んできた人たちの思いや必死さを感じ取ったり、それを自分のこととして捉えたりしていた。このことから、学校において子どもたちが地域の芸能を学ぶということは、音楽や踊りを通じて、地域に根ざして暮らす人たちの心を理解できるようになることに注視する必要があるとの考えに至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナ感染症に伴い、調査地(学校・その他施設)への渡航が難しく、特に、学校での聞き取り調査については、児童への配慮を行う工夫を試みたが、最終的には思うように進めることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2年目は、新型コロナ感染症の影響を大きく受けることが予測されることから、学校や二つの神楽保存会とのインタビューについては、メールや電話、zoom等を活用しながら進めていく。その際、現場に立つ教員だけでなく、教育委員会の行政的なサポートや地域住民との連携が欠かせない。今後も学校および地域との連携を構築することにも重点をおいて研究を進める。 また、本研究では、学校が子どもたちの生活の場でもある地域社会の活性化に貢献する役割を担う、そうした可能性を秘めた場であるという視点に立ち、学校と地域(ここでは神楽保存会のメンバーと自治組織)の間で見られる「接触体験」の分析を行うための理論的枠組みの構築を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症拡大の影響により、当初予定していた調査を行うことが困難であったため。
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