民俗芸能における継承の「危機」は、これまで長く論じられてきたが、一般的に「後継者不足」や保存・継承の正当性といった問題が議論の中心となる傾向が強く、民俗芸能そのものの柔軟性や可変性については看過されてきた。本研究では、「接触」という局面に着目することで、「変化」そのものを継承の要素として位置づけ、その実態を芸能に関わる複数のアクターの相互作用として分析した。 また、映像民族誌の制作に取り組むことで、学術論文に限定されないマルチモーダルな研究成果のアウトプットを実現した。映像民族誌の制作そのものが地域社会との協働的な実践であり、公共人文学的な学術研究のあり方を示すことができた。
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