研究課題/領域番号 |
20K02564
|
研究機関 | 文教大学 |
研究代表者 |
宮地 さつき 文教大学, 人間科学部, 講師 (00760282)
|
研究分担者 |
三浦 綾希子 中京大学, 教養教育研究院, 准教授 (90720615)
呉 永鎬 鳥取大学, 地域学部, 准教授 (00781163)
二羽 泰子 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 特任助教 (20802507)
中川 理季 公益財団法人世界人権問題研究センター, その他部局等, 専任研究員 (00846214)
保坂 克洋 東海大学, 課程資格教育センター, 助教 (70846162)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | マイノリティ / 教育支援 / 領域横断 / 非対称性 / 地域性 / 公共性 / 葛藤 |
研究実績の概要 |
本研究では、マイノリティ支援が制度として開始・継続・終了される一連の政治力学をフィールド調査に基づいて明らかにすることで、マジョリティとマイノリティの非対称的関係及びマイノリティ間の格差・平等を横断的に論じるための基盤形成を図ることを目的とし、2021年度は7回の全体研究会を開催した。個別の研究実績は次の通りである。 宮地は研究協力者とともに、1960年代の農村地域における母子健康施策等に関する資料調査を進めるとともに、当時の青年団出身者への書面インタビュー調査を行い、より詳細な史実を解明し、日本教育社会学会で発表した。三浦は、日本に暮らす移民第二世代の社会統合に関してエスニシティ比較をした研究をまとめた。さらに移民の子ども、若者の社会統合に大きな影響を及ぼす教員の認識に関わる研究を進めた。呉は、実地調査および聞き取り調査に基づき、各種学校である外国人学校に通う子どもたちが、その命と健康を公的に保障する制度から除かれることによって被る不利益、またそれを乗り越えようとする自助的な取り組みについて論文をまとめ、国際シンポジウムにおいても発表を行った。二羽は、異なるマイノリティグループの問題が交差し、社会問題化された際に、各グループがいかなる位置づけで認識され、いかなる影響を被るかについて分析した。結果として、スティグマ化されたグループが拡大され、見えにくいマイノリティを吸収していることが分かった。中川は、京都市における隣保事業廃止後の同和地区住民の生活実態を把握するために、T地区にてフィールドワークを実施した。支援終了後にも住民が生活課題を抱えていることを明らかにし、日本解放社会学会にて発表した。保坂は、学童保育における発達障害児概念の浸透と支援における指導員の葛藤の関連を検討した学会発表や、追加の資料調査及び指導員に対して支援の葛藤に焦点化した補足インタビュー調査を実施した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題の2年目となる2021年度は、個々の研究が進み解明されたことも多く、局面ごと、さらには時点間比較の検討をさらに深めることができた。オンライン会議システムを活用することによって、covid-19の感染拡大下にあっても有意義な議論を行うことができたことから、全体研究会そのものはほぼ予定通りに進めることができた。 しかし一方で、個々の調査研究においては昨年同様にcovid-19の感染拡大に伴う社会情勢が大きな影響を及ぼし、地方自治体の受け入れ拒否、資料館等の閉鎖や人数制限など、フィールド調査の実施にしばしば制限が生じ、計画していた資料収集やインタビュー調査が難しくなるものもあった。その結果、実施方法やその時期など当初の計画を変更せざるを得なくなり、調査活動に支障をきたし、論文作成が滞った面もあることから、総合的にはやや遅れていると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究課題の最終年度となる2022年度においても、残念ながらcovid-19の感染拡大は収束する気配がないが、この2年間の研究過程で資料収集及びフィールド調査はできうる範囲でほぼ完了したと考えている。 対象も時代も地域も異なる個別の研究をその違いや特質に着目するばかりでなく、その共通項を見出していくことこそが本研究課題である。そしてそこでどのような葛藤が生じているのか、その葛藤が何を意味し、私たちが今後なにと向き合っていかなければならないのか。研究者として、支援者として、そして一人の当事者として、何ができるのか。オンライン会議であっても議論を重ねることでその共通項を積極的に見出していきたい。 そのため本年度は、各自で個別研究の深化を図るとともに、そこから見えてきたマイノリティ支援の時点間比較及び非対称性・地域性・公共性、さらにそこで生じる葛藤をより浮き彫りにしていくために、全体会をより重視していく。相互の研究を横断的に俯瞰することは、本研究がこれまでも問題視してきた「マイノリティと教育」研究の個別化・細分化及び閉塞性の打開を試みるうえで有意義であると考える。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2021年度もcovid-19の感染拡大に伴い、予定していたフィールド調査等の実施が困難な状況が続いたことから、次年度使用額が発生した。 2022年度も同様の状況が続くものと考えられるが、引き続きオンライン会議システムの活用、遠隔複写サービスや行政文書開示請求等も活用しながら個別の調査研究を継続し、共同研究としての深化を図っていくこととしたい。
|