研究課題/領域番号 |
20K02566
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研究機関 | 三育学院大学 |
研究代表者 |
篠原 清夫 三育学院大学, 看護学部, 教授 (10647580)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 養護教諭 / 職業的社会化 / 社会調査 / ライフコース / コーホート |
研究実績の概要 |
養護教諭は学校における児童生徒の健康に関して中心的な役割を果たすという、一般教諭とは異なる役割が期待されており、その特徴に特化した体系的・計画的な養成・採用・研修が文部科学省より求められている。養成・採用・研修企画の前提として、養護教諭はどのような状況にあり、どのように成長していくのかという職業的社会化を解明することが重要になってくるが、これまで実証的にはあまり明確になっていない。そこで本研究の第1の目的は、全国小・中学校の養護教諭に郵送調査を実施し、20年前の調査結果と統合して同じ年齢集団のコーホートを用いて分析を行い、社会背景を含めた職業的社会化について明らかにすることである。第2の目的は、この研究成果を基に現在養護教諭が置かれている状況からライフコースに適合した研修内容について提示し、養護教諭の体系的・計画的な養成・採用・研修の企画のための情報発信をし、社会貢献することである。 令和2年度は研究の第1段階として、養護教諭の職業的社会化に関する先行調査研究について、1.役割期待・職務、2.力量形成、3.参加的社会化としての研修、4.予期的社会化としての養成ルート、5.社会調査方法としてのサンプリング・調査方法・回収率、以上5点に焦点化し分析と考察を行い、今後の研究方向性について検討した。その結果、第1に2000年頃までの養護教諭の役割認知は児童生徒の身体的健康が中心であったものが、2000年以降は精神的健康問題への対応を認識するようになったことによる養護教諭の役割変化の検討が必要であること、第2に時代的影響を考慮したライフコースの視点を入れたコーホート分析が求められること、第3に養成ルートや研修等による職業的社会化への影響を明確にすること、第4に良質なデータを得るために無作為抽出法やTDM(Total Design Method)を取り入れ調査を行う必要があることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究の独自性は、これまで少なかった教師の職業的社会化研究の中でも、さらに稀有な養護教諭の職業的社会化について全国データを用いた実証的研究を20年ぶりに行うところにあった。しかしながら令和2(2020)年度は新型コロナウイルス感染症対策のため小・中学校において一斉臨時休校とするなど、養護教諭が通常業務でない状態にあったこと、また養護教諭がこの事態により新たな役割を担うようになったことへの負担を考慮し、調査を延期することにしたため研究計画に遅れが生じる結果となった。
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今後の研究の推進方策 |
令和2(2020)年度は養護教諭が通常業務でない状態にあったため、予定していた調査を実施しなかった。令和3(2021)年度は当初から小・中学校において児童生徒の登校が実施されているため、養護教諭も通常に近い業務に移行してきていると考えられる。そのため調査を実施しても差し支えないと判断し、令和3年度に研究倫理審査を受け、全国小・中学校の養護教諭を対象とする郵送調査を実施する計画である。その際、平成12(2000)年に実施された調査との比較のための職業的社会化に関わる内容のみならず、現在の養護教諭の状況について明らかにする目的で、新型コロナウイルス対応に関する調査項目を追加し調査を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は養護教諭の職業的社会化をライフコースの視点から明らかにすることを目的とした研究であり、平成12(2000)年に実施された全国調査結果と比較する必要があった。しかし令和2(2020)年度は新型コロナウイルス感染の影響で養護教諭が通常業務ではない状態となり、20年前のデータとの比較には適さない時期であると考え、調査を実施しない判断をし、令和3(2021)年度に全国小・中学校の養護教諭を対象とする郵送調査を実施することに計画変更をした。したがって調査票・依頼状・封筒印刷費、郵送費、データ入力費、調査票発送のための研究補助の人件費等、令和2(2020)年度に使用予定であった研究経費を令和3(2021)年度に使用する計画をしている。
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