研究課題/領域番号 |
20K02567
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
牛尾 直行 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 先任准教授 (10302358)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 基礎教育の普遍化政策 / 義務教育 / ケララ州 |
研究実績の概要 |
2021年度の研究も前年度の研究と同様、新型コロナ感染症のために渡印がかなわず、相当に限定された研究となった。しかし、現地調査が全くかなわなかったので、その代替研究として、以下の3点の研究を主に文献研究により実施した。 第一に、インド全体の基礎教育普遍化に関する教育政策・制度について整理を試みた。これはある程度歴史的な背景を固めるため、1800年代からの基礎教育や義務教育、特に「不可触民」の教育機会に関する事情について研究をした。独立前インドにおける各地の義務教育法制について詳細に研究を行った。第二に、本研究が主に対象にしているタミル・ナードゥ州とケララ州の歴史について研究をした。特に、各州の社会文化的事情は2州の地政学的な違いとキリスト教文化・ヒンドゥー教文化との親和性によって違いがもたらされ、そこにカーストや部族文化の事情が複雑に関係して、現在の基礎教育普遍化のかたちに大きな違いがもたらされていることが分かってきた。第三に、2010年以降の現代インドにおける教育政策全般に関する研究を実施した。RTE2009が施行されて10年以上経過した現在、インド政府は基礎教育普遍化に関してどのように向き合い、同時に自国の政策を評価しているのか。直接には本研究が目指す2州の比較教育制度論研究には関わらないかもしれないが、現代インド全体がどのように2000年代に入ってからのSSA政策・RMSA政策を推進しようとしているのかを確かめることは、2州の基礎教育普遍化政策を考察する上で重要であると考えた。そこで、インド教育省のサイトからダウンロードしたReforms in School Education 2014-2020などを教育普遍化の視点から分析した。 以上のように、2021年度の本課題研究は限定的なものとなったが、2022年度の研究実施のための大切な地歩を固める基礎研究となったと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
最大の原因は、新型コロナウイルスの流行によりインドへの入国と現地調査が困難な事である。現地の研究者仲間や現地協力者にコンタクトを取り、調査の実施を依頼することも考えたが、回答の精度が低くなること、実際の調査が形通りになってしまい、踏み込んだ調査ができないと経験上知っているので、取りやめた。 しかし、昨年度と比べ今年度はこのような状況の2年目だったので、ある程度現地書籍をWEBや現地書店を通じて購入したり、WEB上のPDF資料をダウンロードして活用するなど、この状況に対応できたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、夏に現地調査を実施し、タミル・ナドゥ州とケララ州2州の基礎教育普遍化政策の異同を詳細に明らかにしたい。RTE法の施行状況といった義務教育制度のみならず、SSA・RMSAなどの政策がどのように変化しているのか、またそこにどのような社会文化的背景が影響しているのかを、「政策・制度」と「学校や子どもたちの実態」の2側面から考察する。2021年度研究から見えてきた、インド政府が進めようとしている教育制度全般の再設計が、2州において社会文化的背景の違いからどのような公教育制度の違いを生み出していくのか明らかにし、年度末には学会発表および学会紀要論文作成につなげたいと考えている。 本研究は、当初予定していた計画では今年度が最終年度だが、上記の研究の遅れもあり、可能ならば来年度まで研究を延長して実施したいと計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のために渡印できず、海外渡航費および調査用ノートパソコン購入費などがかからなかった。また、数件は文献購入や物品購入などの必要があったので予算を執行したが、2021年度に計画していた計画を予定通りには執行できなかったため、予算を次年度に繰り越した。2022年度は本格的に調査研究を実行し、予定をしている額の適正な執行に努めていく。
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