研究課題/領域番号 |
20K02569
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研究機関 | 日本体育大学 |
研究代表者 |
南部 さおり 日本体育大学, スポーツ文化学部, 教授 (10404998)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | スポーツと親子関係 / 生涯スポーツ |
研究実績の概要 |
親の教育的働きかけが子どもの運動・スポーツへの向き合い方にどのような影響を与えるかを検証するための基礎データを収集する目的で、研究への協力を申し出てくれた体育大学の学生及び文系大学の学生、理系大学の学生を対象に、任意回答にて、アンケート及び聞き取り調査を行った。 武道学生においては親の競技経験が武道選択及び継続に大きく関わっていた。それ以外の競技者においても、スポーツとの向き合い方に非常に前向きな協力をする親の存在は、明らかに競技のモチベーションに影響を与えていた。受験という人生の大きな節目において、競技継続を進路選択上の大きな目的としている学生に対しては親の理解と応援という要素は必須であり、この結果は予想通りのものでといえる。 また、海外で活躍する日本人選手の存在とその報道、そして漫画などのサブカルチャーがSports Life Courseに大きく影響を与えたとする回答であった。このような意味でも、このコロナか禍で開催される東京五輪が子どもたちのスポーツキャリアに与える影響はかなり大きくなることが予想される。現時点で開催が危ぶまれている同大会の動向が競技者にどのようなインパクトを与えるかという点も含め、注視していく必要があると考える。 今年度の実績中、2つの論文はいずれも指導者に向けたものではあるが、競技に取り組む選手との向き合い方について啓発するものであり、浦安市教頭研修会で行った講演では、親子関係を含め、大人の言動がいかに生徒に影響を及ぼすかという観点から論じており、長野県学校事故対応に関する研修会では、親の影響で競技を始め、頭角を現していた生徒が指導者による行き過ぎた指導で死に至らしめられた事件を題材に、スポーツ活動においていかなるかかわりが子どもを伸ばし、そして追い詰めるのかについて講演を行った。いずれの報告でも、本研究における競技者の聴き取り内容が非常に役に立った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度はコロナ禍の影響により、聴き取り調査にはかなりの制約があり、当初予定していた方法での調査研修の実施が困難であった。 そのため、複数の大学でのリモート授業時に協力学生を募ったが、十分な数の協力を得ることができなかった。また授業受講者という制約上、研究協力者には偏りが存在しているため、その偏りを埋めるための調査がさらに今後必要になってくると考えている。 調査対象者に対しては、自らのスポーツ経験と親の応援の有無、程度、競技を辞める際の親への相談状況、協議継続のモチベーションとしての親の存在などに関し、半構造化インタビューを重ねながら、研究の方向性を模索する作業を行ってきた。 これらの成果から、このアプローチの限界と新たなアプローチの可能性が見えてきたため、今年度は質問方法をさらに工夫しながら最大限の成果をあげることを予定している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度も緊急事態宣言の発令に伴い、前期の授業がリモート対応になったこともあり、在宅ワークがメインとなったことから、調査には工夫をする必要性を強く感じている。 早い段階から研究協力者を募り、zoomなどを用いてインタビューを行うなど、質を担保すると同時に、様々な成書などによってスポーツ活動と親の影響に関して広く情報収集を行うことを予定している。プロ、セミプロスポーツ選手の幼少期の経験や親子関係などに焦点を当てた文献は多数存在しており、これらの文献収集・研究も行っていきたい。 ただし、国によるワクチンの供給と接種がかなり進められることが報じられており、年度後半には当該年度に行うことのできなかった調査研究を追加で実施することが見込まれている。さらに研究対象者数を増やしていきたいと考えている。 さらに、親の意向でその競技を始め、継続している学生と、そうでない学生との競技力や活動時間、希望進路と生涯スポーツへの意欲の違いなどについても調べていきたいと考えている。 またとりわけ、大学入学後にそれまで行っていた競技を変更した学生に対して重点的な聴き取り調査を行い、その意思決定に至る交絡因子を明らかにしていくことに取り組んでいきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍による移動制限に伴い、調査のための旅費として予定していた額を使用することができなかった。そのため、在宅での調査研究を行うために必要となった物品を購入することで研究を進めることとなった。 次年度にはワクチンの供給・接種が進むことで、当該年度に行うことのできなかった調査研究を追加で実施することが見込まれる。
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