研究課題/領域番号 |
20K02570
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研究機関 | 武蔵大学 |
研究代表者 |
垂見 裕子 武蔵大学, 社会学部, 教授 (10530769)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 学力格差 / 家族構成 / 所得 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本における家族構成による学力格差の程度とメカニズムを明らかにすることである。日本におけるひとり親世帯の増加や貧困状況は明らかになっているものの、ひとり親世帯の子どもの教育に焦点を当てた研究は少ない。 米国のAquino et al. (2022)は、経済・世帯・環境などにおける破壊的なイベントが子どもにもたらす影響の異質性に着目し、例えば人種や家庭の社会経済的地位により、災害や離婚が子どもに及ぼす影響が異なるメカニズムの概念的枠組みを提示している。この概念的枠組みを適用して、全国学力・学習状況調査のデータを分析し、日本において家庭の所得が高い層と低い層で、家族構成と子どもの学力の関連が異なるのかを検証した。分析結果から(1)所得の高い層ではひとり親と二人親世帯で育つ子どもに有意な学力差があるものの、所得の低い層ではひとり親と二人親世帯で育つ子どもに有意な学力差がないこと(2)このような家族構成と所得の複合的な影響は母子世帯では見られるが、父子世帯では見られないことが明らかになった。本結果からひとり親世帯が子どもの学力に及ぼす影響は一様でなく、家族がおかれた状況や環境を勘案した分析、また施策が必要なことが示唆された。 また、Raymo et al.(2023)は少子化が進む東アジア諸国で、「diverging destines(家族形成を通じた広がりゆく格差)」の枠組みを用いて、家族行動の階層化や家族の状況と子どものウェルビーイングの関係の長期的動向を実証することの重要性を説いている。今後は、これまでに実施された3回の全国学力・学習状況調査、保護者調査のデータを用いて、日本で家族構成による学力格差の在り方が10年間で変容しているのかを明らかにする必要があると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
全国学力・学習状況調査のデータ使用の条件が厳しくなり、データ分析できる時間や場所が限られたため、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は全国学力・学習状況調査の複数年のデータを用いて、家族構成による学力格差の長期的傾向を分析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外出張を延期したため、未使用額が生じた。次年度分と合わせて、次年度に行く海外出張の費用として使用する計画である。
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