研究課題/領域番号 |
20K02572
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
沖 清豪 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (70267433)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 入学者選抜 / イギリス / 公正性 / 機会の平等 / 機会の公平 |
研究実績の概要 |
本研究はイギリスにおけるGCE A-level試験改革を中心とした高等教育機関への入学者選抜制度改革を通じて、Wide ParticipationとFair Access、すなわち公正性と多様性がどのように議論され、制度化されてきたのかを検討し、選抜制度やその中での取組みに関する妥当性を検討することを目指すものである。 21年度もCOVID-19の影響で試験実施団体などへの現地調査を実施することができず、主に文献調査を中心として、2010年代にどのような制度が導入され、背景となる理念がどのように転換してきたかを検討した。 英国大学連合(UUK)は2020年のレポートで、大学入学者選抜におけるシュワルツ報告の理念に選抜制度の公正性を「志願者の利益を守り、最大限追求すること」と定義し、従来の大学側主導の選抜から志願者という利害関係者の存在を重視する方向への転換を示し、入学者選抜制度の公正性を担保するために、評価方法の透明性、信頼性、妥当性、および説明可能性の重要性を提言している。さらに、こうした選抜制度を実施するためにも、高等教育機関自体、選抜の過程、および担当教職員の専門性を強調することで、専門職たる人材育成の重要性も指摘されている。 こうした転換は、公正なアクセス(Fair access)から公正な選抜(Fair admission)へと選抜「方法」に関する公正性・透明性に議論がシフトしつつあることを示しており、2020年代の入学者選抜が、伝統的な「メリトクラティックな機会の平等(equality)」モデルから代替的な「メリトクラティックな機会の公平(equity)」モデルへの転換を示唆するものであるのかを継続的に確認していくことの重要性が明らかとなった。引き続き、この点について検討を続けることとしたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
文献調査を通じて、選抜制度の理念が「メリトクラティックな機会の平等(equality)」モデルから代替的な「メリトクラティックな機会の公平(equity)」モデルへと転換しつつある点を明らかにできたことで、一定の成果を上げている。一方で、本来であればイギリスを訪問し、試験実施団体やその受験生を育成している代表的なシックスス・フォーム・カレッジ、および社会・経済的背景に配慮した選抜制度を導入している大学アドミッション部門への実地調査を行い、文献調査で示された点がどのように利害関係者に意識されているのかを明らかにすることができていない点は2022年度以降の課題として残されている。この点で順調であるとはいいがたい。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度はこれまで文献調査で明らかにできた論点、特に公正性と透明性の担保がどのように具体化されているのか(いないのか)を、特に社会・経済的背景に配慮した選抜制度を導入している大学アドミッション部門への実地調査を通じて明らかにする。また、2020年度と21年度はCOVID-19の影響でGCE A-level試験が実施できなかったことから、2022年度の試験実施の状況を詳細に検討し、公正性と透明性のあり方が本当に変容してきているのかを多様なデータ、および試験実施団体への訪問調査等により検討することとしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
(1)2021年度は引き続きCOVID-19の感染拡大の影響で、イギリス実地調査を行うことができず、旅費を使用することができなかったため。 (2)実地調査を踏まえて内容を精査し実施する予定であった関連する中等・継続・高等教育機関へのアンケート調査も2022年度に実施繰り延べとなり、実施のための通信費や人件費を使用していないため。
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