研究課題/領域番号 |
20K02578
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研究機関 | 独立行政法人大学改革支援・学位授与機構 |
研究代表者 |
野田 文香 独立行政法人大学改革支援・学位授与機構, 研究開発部, 准教授 (20513104)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ASEAN / 全国資格枠組み(NQF) / AQRF / 高等教育 / 職業教育 / 学位・資格 |
研究実績の概要 |
本研究は、学術・実践の両面から日本型NQFの策定可能性への示唆を得るため、2014年に構築されたASEAN Qualifications Reference Framework (AQRF)に係る各国NQFの策定プロセスや枠組みを分析し、人材モビリティ促進の観点からNQFの運用状況を類型化し、課題を明確にすることを目的としている。近年、我が国においても、職業教育の格上げなどにみられる各教育セクターの位置づけの変革、学位・資格のインフレーション問題、学修成果の可視化への需要拡大など、高等教育を取り巻く環境が大きく変化している。このような文脈において、国際通用性を伴った質保証の観点から、学位・資格の保有者に求められる学修成果(アウトカム)をいかに客観的で透明性のあるものとして示せるか、学位・資格などの質保証に関して、具体的にどのような参照ツールを用意すべきかなどについて、具体的な指針がまだ示されていない。この点において本研究は、既に開発が進んでいるAQRFに関わる各国NQF策定に係る政治・社会的背景および策定パターンや活用に関する課題の整理を行い、NQFを有しない日本が枠組み策定の是非を議論する上で、重要な根拠情報となり得ることが期待できる。 令和2年度は、AQRFに関して国内外の先行研究を行い、各国のNQFの情報が記述されているインベントリ報告書を基礎資料とし、NQF分類の分析・整理を進めた。さらに、ASEAN各国のNQF導入の課題について調査を実施しつつ、日本型NQF構築の可能性を示唆するため、日本の学校教育制度に関わる教育資格に関する日本型資格枠組み(試行版)を策定し、その成果をセミナーなどで発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、AQRFについて国内外の先行研究を進め、AQRF傘下のNQFについて各国政府の資料やユネスコのカントリーレポートの他、EUとASEANの協働イニシアティブであるSHARE(European Union Support to Higher Education in the ASEAN region, 2018)の報告書などを基礎資料とし、各国NQFの枠組み・導入背景・運用状況について分析を行った。日本への示唆という点においては、日本型NQFの課題と可能性についても調査を進め、その成果について学会やセミナーなどで報告を行った。この点において、当該研究は概ね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きドキュメント分析を行うとともに、NQFの枠組み・導入背景・運用状況について類型化を図る中で各パターンに該当する国々を取り上げ、今後は、NQFの発展段階に応じ、ASEAN諸国の複数事例についてオンラインによるヒアリング調査の準備を行う。また、AQRFを含む地域別資格参照枠組みについてユネスコが開発支援を行っている「世界参照水準(World Reference Levels: WRL)」について、個人の能力や学位・資格について説明、比較できるアウトカム基盤型のグローバルツールについて分析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、学会やセミナーなどがオンライン開催となったことで旅費に関するコストが削減できた。削減されたコスト分については、今後、関連資料や書籍購入等に充当する計画である。
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