研究課題/領域番号 |
20K02582
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
豊泉 周治 群馬大学, 共同教育学部, 教授 (90188813)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 社会的投資福祉国家 / アクティベーション / 学習福祉 / 生涯学習社会 |
研究実績の概要 |
2019年8月における「予備的基礎教育(FGU)」の制度創設を中心に,デンマークにおける学習福祉と青年教育政策の現代的展開を明らかにすることが本研究の目的である。2020年度は,新型コロナ感染症の感染拡大のために第1の課題である現地調査を実施することができなかったため,第2の課題である理論的研究に徹し,これまでの研究成果の整理・総括に努め,単著の執筆を進めた。 第2の課題である理論的研究の焦点は,FGU創設の目的と意義を,グルントヴィ以来の成人教育の伝統,1990年代後半からのアクティベーション政策,さらに2007年以降の生涯学習戦略を踏まえて,デンマークにおける「学習福祉」による福祉国家の「現代化」という,独自の歴史的な文脈のなかに位置づけることである。 一般に1990年代後半以降のデンマークの社会政策は,米英型の「就労福祉」に接近するものと目され,しばしば批判的に言及されてきた。実際に個々の施策のレベルでは,政権の枠組みの違いによって,その距離はかなり大きく変化するが,若者の「社会的包摂」に向けた青年教育政策という「学習福祉」の視点は,つねに一貫していたと考えられる。 執筆中の単著(仮タイトル『幸福のための社会学:日本とデンマークの間』)では,1990年代後半以降のデンマークの社会政策を,青年教育政策の観点から振り返ることによって,福祉国家デンマークの「現代化」における「学習福祉」の一貫性と重要性とを,「世界一」ともいわれる高い幸福度の達成ともからめ,「社会的投資福祉国家」の概念をもちいて明らかにした。2021年度秋までには刊行の予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
海外出張の困難な状況下で理論的研究に徹し,単著の執筆を進めることができた点では重要な成果があったと考えるが,FGUの制度設置をめぐる諸議論や制度発足後の状況や課題を現地調査によって明らかにするという,第1の目的にほとんど手を付けられなかった点で,進捗状況は遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナ感染症感染拡大の今後の状況しだいではあるが,可能な場合には2021年度内にデンマークへの研究出張を実施し,FGU関係施設や関係研究者への訪問,インタビュー等,既定の調査研究を進める予定である。ただしそれが難しい状況も想定されるため,インターネットを活用してFGU創設に関わる報告書等の蒐集・分析に努めるとともに,デンマークの関係研究者とのオンラインでの情報交換,意見交換を進めて,研究の進捗を図ることとする。
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