研究課題/領域番号 |
20K02583
|
研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
佐々木 啓子 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 名誉教授 (70406346)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 女子留学生 / 女性リーダー / 大学 / ジェンダー / 高等教育 / 留学支援ネットワーク / 留学経験 / 帰国後の活動 |
研究実績の概要 |
本年度の研究成果としては学術論文2本(うち1本は国際学術論文)、学会発表2件であった。 明治以降の女子留学生を、第1ステージ:欧化主義期(1868-1879),第2ス テージ:近代国家形成に必要な西洋的知識・技能の移入期(1880-1889),第3ステージ:女子高等教育の興隆と女性人材育成期(1890-1909),第4ステージ:女性大学人・専門職層の国際交流開始(1910~)という「4ステージ論」を展開し、女子海外留学・派遣生の概略を描き、共著にて国際ジャーナルに投稿し掲載された。 米国のペンシルバニア女子医科大学の史料を保存しているデュルックス大学アーカイブズ、およびコロンビア大学にオンラインでアクセスして、戦前期女子留学生の記録文書および写真を検索した。さらに日本における医学・医療系の女子留学生に着目し、日本で初めて海外の女子医科大学に留学してメディカル・ドクターを取得した岡見京を事例として、明治期日本の医師養成制度のなかでその意義を論じ大学紀要論文にその成果を発表した。 女性のトランスナショナルな移動をジェンダーの視点で分析をした。具体的には米国のブリンマー・カレッジに留学し1904年に経済学・歴史学の学士を取得した河井道のその後の国際的な活動や、戦後日本の教育基本法の理念策定に大きく関わった事実と、留学経験との関連性を追求して、ジェンダー史学会でその成果を発表をした。また女性リーダー輩出の日本的構造を研究して日本教育社会学会大会にて共同発表を行った。 作業としては、1870年代から1920年代までの女子留学生のリストを作成し、それをもとにさらに人物事典などを参照して個々人のプロファイルを作成した。私費留学生については、出身学校別に、津田塾、日本女子大学校、神戸女学院からの留学生をまとめて類型化を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍で渡航はできなかったが、海外の大学アーカイブズのオンライン資料検索および国内でのメール依頼による資料収集を実施した。2020年度後半はオンラインでの学会発表を行い、論文を投稿するなど、在宅での調査研究を工夫することで成果が得られた。
|
今後の研究の推進方策 |
戦前期の国費留学はほぼ捉えられ、今後はさらに私費留学の全体像を捉えることを目指す。そのためには領域別(医学・医療系、教育学系、文学系、音楽系、体育など)および出身校別(津田塾、神戸女学院、日本女子大学、東京女子大学)に、卒業生の記録を手掛かりにリストアップする予定である。また、留学のネットワークとしては、ミッショナリーからフィランソロピー、国際的な女性のネットワークやYWCAなどの活動を調査する計画である。 こうしたマクロな統計的な調査とともに、個々の留学生のbiographyを収集し、海外での留学経験、すなわち、大学での勉学や学生との交流、大学外での活動や大学所在地のsocietyでの体験などを詳細に検討する計画である。さらに海外留学経験が、帰国後のアカデミックなキャリアや社会的活動にどのように結びついていったか、そして留学先での人的影響(学長や教授、学生集団)やネットワークによって培われた国際感覚によって、帰国後の活動を通して、日本社会にどのような変革をもたらすことになったかを明らかにする予定である。 海外渡航が可能になれば米国のロックフェラー・アーカイブ・センター、およびロックフェラー 大学創立者館で、日米学術交流の記録文書を収集する。国内では外務省外交資料館の資料『在外本邦留学生及研究員関係雑件』で、学生・教員交換事業の実態を調査し、神戸女学院および聖路加女子看護学校(現、聖路加国際大学)で資料を収集し、ロックフェ ラー関係文書と照合する計画である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に予定していた海外での資料収集および学会発表が渡航制限のために実施できなかったため、旅費としての支出がなかった。次年度に渡航制限が解除されれば、当該年度にできなかった資料収集を行うために使用する予定である。
|