研究課題/領域番号 |
20K02584
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
岩本 健良 金沢大学, 人間科学系, 准教授 (50211066)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 性的指向・性自認(SOGI) / LGBT / ジェンダー表現 / 広告自主規制基準 / 社会調査 / 性別欄 / ジェンダー統計 |
研究実績の概要 |
ジェンダー表現をめぐる差別的表現やジェンダーステレオタイプ、さらには広告炎上が日本で多発している原因を、国際的視点から国内外の広告関連団体などの資料や調査の比較によって探った。その結果、広告自主規制基準の国際的潮流として、海外では国際商業会議所(ICC)広告基準など、国際的な業界団体や民間の自主規制団体が国際的な基準を作成し、国際広告自主規制委員会(ICAS).ヨーロッパ広告基準アライアンス(EASA)などの民間の自主規制団体がそうした国際基準に準拠した倫理規則を作成・運用・改訂し、ICCや世界広告主連盟(WFA)が組織的な教育・研修を行っている。これに対して日本では、こうした制度的改善の国際的枠組みが存在することすらほとんど知られず、取組もごく一部にとどまるという制度的なギャップが存在することを明らかにした。 グローバル化や、国民のジェンダー表現に関する要求水準の高まりを受け、企業(特に広告・メディア業界各社)や関連業界団体にとって、情報キャッチアップと研修制度の構築、国内基準を国際的水準の基準へとアップデートし、国際的連携の強化と人権・ダイバーシティ委員会の創設・機能強化といった、制度的改革が必要であることを示した。 このほか、共同研究での調査に基づき、日本で性自認を尋ねた際の「決めたくない/決めていない」の回答が性的マイノリティに当たるのか否かの分析、LGBTなど職場の多様性と働きやすさの関連、オフィスにおける男女共用トイレの利用意向、に関して分析・報告を行った。 また、LGBTの人権やプライバー保護とジェンダー統計の維持向上の関係を、政府や自治体の取組事例や動向を調査し、両立が十分に可能であること、両立のための性別欄の具体的扱い方を明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナ感染症の拡大・継続により、予定の調査や資料収集が困難になったことにともない、2022年度は計画を変更して、主に日本における広告のジェンダー表現をめぐる制度的課題の解明に取り組んだ。結果、論文1点、学会報告等6点(うち1点は国際学会報告、2点は日本学術会議からの依頼(招待))であり、研究課題に対して多角的に着実に成果を上げつつある。成果の一部は、講演・マスコミへの取材対応・自治体等への情報提供を行い社会還元に努めた。
|
今後の研究の推進方策 |
新型コロナ感染症の動向をふまえつつ、繰り延べていた調査・資料収集を進めるとともに、柔軟に対応しながら計画を推進し、研究目的の達成を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症の感染が拡大・継続しており、資料収集や調査のための出張が困難であり計画変更を余儀なくされたこと、また報告を行った学会等がいずれもオンライン開催となったため旅費が不要となったことによる。予定していた資料収集や調査は次年度以降に繰り延べて実施予定である。
|