研究実績の概要 |
本研究の目的は,学習指導要領の改訂が自治体独自カリキュラムに及ぼす影響を「教育課程特例校制度」を事例としながら検証することにより,カリキュラム政策をめぐるナショナル・スタンダードとローカル・オプティマムのあるべき関係性について示唆を得ることである。 まず,文部科学省の資料より,「教育課程特例校制度」の現状を確認した。教育課程特例校は,2019(平成31)年4月時点では,指定件数258件,指定校数2,434校であった。新学習指導要領が本格実施となる2020(令和2)年には214件(前年より44件減少),1,868校(前年より566校減少),2021(令和3)年には207件(前年より7件減少),1,768校(前年より100校減少)と小学校の外国語教育を中心に廃止する自治体・学校が多く見られた。2022(令和4)年には211件(前年より4件増加),1,823校(前年より55校増加)と若干の増加が見られた。さらに2023(令和5)年には215件(前年より4件増加),1,801校(前年より22校減少)と新たな動きが確認できた。先に大桃・押田(2014)で取り上げた自治体でも学習指導要領の改訂等に伴い,時数が変化したり(世田谷区や金沢市等),廃止したり(宇土市や南足柄市等)と自治体の状況により変化がみられた。 当初,質問紙調査を計画していたが,コロナ禍のため取り止め,自治体独自カリキュラムの存廃をめぐる事例研究に努めた。特に沖縄県を中心に「外国語教育」や「海洋教育」に関する自治体・学校の取組を実地調査し,学習指導要領改訂後も地域の状況に応じて,独自カリキュラムの開発や実施を進めたり,一方で変更・中止したりという実態を把握することが出来た。 ナショナル・スタンダードの基準性の強化に伴い,ローカル・オプティマムの弾力性は狭まったものの地域の実態に応じた教育施策が展開可能な制度が構築されている。
|