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2023 年度 実施状況報告書

日本の児童保護事業と学校教育の普及における近代的子ども観の構築に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 20K02590
研究機関新潟県立大学

研究代表者

高橋 靖幸  新潟県立大学, 人間生活学部, 准教授 (30713797)

研究分担者 元森 絵里子  明治学院大学, 社会学部, 教授 (60549137)
土屋 敦  関西大学, 社会学部, 教授 (80507822)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2025-03-31
キーワード子ども観 / 子ども史 / 児童虐待 / 社会的養護 / 児童労働 / 社会学 / 子ども社会学 / 社会構築主義
研究実績の概要

令和5年度の研究実施計画に基づき、(A)子ども社会学・子ども史研究の研究動向を理解するために文献講読を行うこと、(B)各自、資料収集と読解により担当する分野の子ども観について検討を行うこと、(C)前年度の各自の成果を発表していくこと、そして(D)これまでの3年間で得られた研究の知見を統合して、本研究の問いに対する明確な見識を学会報告や論文発表を通じて提示すること、に取り組んだ。
(A)については、これまで同様、オンラインによる定期的な研究会での文献講読・文献検討を実施した。(B)については、公共図書館、大学図書館の利用、および国立国会図書館の訪問や遠隔複写サービスなどを活用し、新たな歴史資料の収集に努めた。結果、各自が本共同研究の全体の成果につながる歴史資料の収集を実現することができた。
(C)については、これまでに各自で収集した歴史資料の検討と研究会での議論の成果の一部を論文化して発表した。研究代表の高橋靖幸は、2024年2月、単著『児童虐待の歴史社会学』(勁草書房)を刊行した。研究分担者の元森絵里子は、2023年9月『生活経済政策』(321)、及び2024年3月『現代思想』52(5)にて論文を発表した。同じく、研究分担者の土屋敦は、2023年7月『医学が子どもを見出すとき』(勁草書房)、及び2023年9月『社会的養護の社会学』(青弓社)にて論文を発表した。
(D)については、その成果の一部を、令和3年度にすでに、元森・高橋・土屋・貞包『多様な子どもの近代』(青弓社、2021 年)として刊行している。さらに、研究代表の高橋靖幸が、2023年6月に日本子ども社会学会第29回大会、及び2023年9月に日本教育社会学会第75回大会にて、本共同研究の統合的な知見の一部を提起する報告を行った。現在、これらの研究成果をより具体的に論文化し、最終的な成果報告を展開する段階に至っている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

3名の共同研究者がそれぞれ、各々の担当する時代や領域の子ども問題について、 当初の計画に則り、歴史資料収集と読解を継続することができている。3名の勤務地は東京、大阪、新潟と地理的な隔たりがあるものの、オンライン会議サービス「Zoom」を使用して研究会を定期的に開催することで、研究課題の確認、研究内容や進捗の共有を図ることができた。研究経過の共有のために必要な研究会の開催は、各自、本務校での業務や授業の対応に引き続き時間が割かれたが、計画的に日程を確保し定期的な研究会の開催につとめることができた。また本共同研究のこれまでの研究成果の一部を、論文の発表や学会等の発表によって発信することができた。
しかしながら、各自の成果を3人の共同成果としてまとめあげて発表する点には課題が残された。令和3年度には事前の計画に先行するかたちで、3人の共同成果の一部を書籍出版・発表することはできたものの、本共同研究の目的達成のためにさらなる成果の積み上げが期待される。研究代表の高橋靖幸は、2023年6月に日本子ども社会学会第29回大会、及び2023年9月に日本教育社会学会第75回大会にて、本共同研究の統合的な知見の一部を提起する報告を行った。加えて、研究分担者の元森絵里子が、2023年9月に日本教育社会学会第75回大会の課題研究にて、また同じく研究分担者の土屋敦が、2023年6月に比較家族史学会春季大会のシンポジウムにて、本共同研究の統合的な成果となる発表を実施した。今後は、当初の計画の通り、研究代表者が中心となってこれらの研究成果を統括し具体的に論文化していくことが求められている。

今後の研究の推進方策

令和6年度においては、令和5年度までの研究作業であった(A)子どもの歴史性・構築性をめぐる欧州の子ども社会学・子ども史研究の研究動向を理解するため文献講読を行うこと、(B)各自の資料の収集・読解により、それぞれの担当する領域の子ども観の検討を行うことを継続していく。
さらに期間延長申請の承認を得て最終年度となる令和6年度は、これまでの各自の研究の成果によって得られた知見と課題から、各領域のつながりや共通の歴史観を検討する作業を共同で進めていき、また令和5年度までに発表することのできた研究成果を基軸に、それらを統合するかたちで本研究の問いに対する明確な見識を論文発表を通じて提示する。本研究の成果は、最終的に学術書としてまとめて公刊することを目指す。
令和5年度は、3人の研究成果を各自の研究発表として発信することができたものの、それらを統合して共同成果として論文化する作業にやや課題が残ってしまった。令和6年度は、定期的に開催する研究会の機会に議論を丁寧に行い、最終年度の本共同研究の成果としてまとめあげる作業に邁進する。

次年度使用額が生じた理由

期間延長申請を見据えて、歴史資料のデジタル化の作業に必要となる機器類の購入と、資料整理・保管のアルバイトを雇うことを控えたため、物品費と人件費の使用が抑えられる結果となった。次年度使用額は、資料収集のための旅費と、資料のデジタル化の作業に必要となる機器類の購入、アルバイト雇用のために使用する。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (4件) 学会発表 (4件) 図書 (4件)

  • [雑誌論文] 〈子ども支援=教育保障〉の歴史的位相:子ども期の/を通した統治の変遷2024

    • 著者名/発表者名
      元森絵里子
    • 雑誌名

      現代思想

      巻: 52(2) ページ: 156-165

  • [雑誌論文] ヤングケアラーの社会問題化の歴史背景を読む2023

    • 著者名/発表者名
      元森絵里子
    • 雑誌名

      生活経済政策

      巻: 321 ページ: 13-17

  • [雑誌論文] (書評)鍾家新著『Japanese War Orphans : Abandoned Twice by the State』2023

    • 著者名/発表者名
      土屋敦
    • 雑誌名

      福祉社会学研究

      巻: 20 ページ: 25-263

  • [雑誌論文] (書評)稲井智義著『子ども福祉施設と教育思想の社会史:石井十次から冨田象吉、高田慎吾へ』2023

    • 著者名/発表者名
      元森絵里子
    • 雑誌名

      大原社会問題研究所雑誌

      巻: 781 ページ: 75-78

  • [学会発表] 大正期における児童保護委員制度の成立--救済事業調査会と東京府児童保護委員の活動を中心に2023

    • 著者名/発表者名
      高橋靖幸
    • 学会等名
      日本子ども社会学会第29回大会(J:COMホルトホール大分)
  • [学会発表] 大正期における「児童保護」の理念と展開--東京府「児童保護員」制度とその活動に着目して2023

    • 著者名/発表者名
      高橋靖幸
    • 学会等名
      日本教育社会学会第75回大会(弘前大学)
  • [学会発表] 多様な子どもと教育保障の相剋の歴史と現在--趣旨説明を兼ねて2023

    • 著者名/発表者名
      元森絵里子
    • 学会等名
      日本教育社会学会第75回大会(弘前大学) 課題研究Ⅲ「『教育と福祉のクロスオーバー』を教育社会学はどう見るか--子どもの多様性と教育保障の相剋を踏まえて」
  • [学会発表] 乳児院における母性的養育剥奪論の盛衰--1960―80年代における施設養護の展開から2023

    • 著者名/発表者名
      土屋敦
    • 学会等名
      2023年度比較家族史学会春季大会(関西大学) シンポジウム「家族と病い」
  • [図書] 児童虐待の歴史社会学:戦前期「児童虐待防止法」成立過程にみる子ども観の変遷2024

    • 著者名/発表者名
      高橋靖幸
    • 総ページ数
      448
    • 出版者
      勁草書房
  • [図書] 「第10章 愛着理論の再浮上と施設養護の『家庭化』--一九九〇~二〇〇〇年代における乳児院の変遷を中心に」土屋敦・野々村淑子編『医学が子どもを見出すとき: 孤児、貧困児、施設児と医学をめぐる子ども史』2023

    • 著者名/発表者名
      土屋敦
    • 総ページ数
      432
    • 出版者
      勁草書房
  • [図書] 「第1章 母性的養育の剥奪論/愛着理論の再構築と里親委託--一九七〇―二〇〇〇年代の里親関連専門誌の分析から」土屋敦・藤間公太編『社会的養護の社会学: 家庭と施設の間にたたずむ子どもたち』2023

    • 著者名/発表者名
      土屋敦
    • 総ページ数
      240
    • 出版者
      青弓社
  • [図書] 「第2部2ライフコース フィリップ・アリエス『〈子供〉の誕生』--アンシァン・レジーム期の子供と家族生活」日本家族社会学会編『家族社会学辞典』2023

    • 著者名/発表者名
      土屋敦
    • 総ページ数
      754
    • 出版者
      丸善出版

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公開日: 2024-12-25  

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