研究課題/領域番号 |
20K02594
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
小松 太郎 上智大学, 総合人間科学部, 教授 (20363343)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 平和教育 / 平和構築 / 平和 / 紛争 |
研究実績の概要 |
研究年度2年目では、紛争影響国における平和教育実践マッピングのための資料収集、および先行研究論文・報告書の収集とレビューを継続した。さらに、ウクライナ情勢を受けて実施されたセミナー等に参加し、平和教育について研究者や実務者と意見交換を行った。先行研究の収集作業では、ノンフォーマル平和教育(NFPE: Non-formal peace education)がこれまで研究者によって十分に記録・分析されてこなかったことがわかった。特に事業評価については、実施団体が小規模の団体であることが多いためか、厳密な(rigorous)なものは多くない。平和教育と称しながらもその概念やアプローチについて十分に説明しているものも、必ずしも多くはない。このことを受けて、また、関連学会での発表プロポーザルに対するフィードバックの内容、およびこの2年間で海外調査が出来なかったことを鑑み、今後の研究内容の若干の修正を検討した。具体的には、当初予定していた概念、アプローチ、成果といった複数の項目から体系的に整理するNFPEのグローバルマッピングから、焦点をさらに絞り、紛争影響国というコンテクストでNFPEがいかに公教育の限界を克服しようとしているかという観点で、グローバルな傾向を確認すると同時に、事例研究を通じてその特徴と課題を捉えることとした。紛争に影響を受けた分裂国家では、政治的影響、権威的なガバナンス、系統主義(教科中心主義)的教育観、平和教育研修の欠如等の問題が顕著であり、構造的暴力の削減を目的とした平和教育の実践には限界がある。一方でNFPEでは、規模は小さくとも、創意性ある教育実践が比較的可能である。今後の研究期間では、実際にそのような実践がいかに持続性を担保しつつ、計画・実現されているか調査研究することとしたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
海外調査が実施できなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
研究初年次と2年目の予定していた5ヵ国の現地調査が出来なかったこともあり、経年でのプログラム効果を確認する評価研究は行わない。焦点をプログラム概念と実施に絞り、その分析軸を精緻化したうえで、NFPEがその自律性をいかに生かして平和教育を実現しているか、調査研究することにする。今年度は2か国、第4年次と最終年次それぞれ1か国において現地調査を行う。訪問地と調査手法は基本的に当初の計画通りとし、プログラム提供者および受講者への自記式アンケートおよび集団面接を実施する。また、可能な限り実践を非参与観察し、指導法や講師と受講者のインターアクションを記録し分析する。その成果は、①平和教育の傾向と課題、②個別・比較事例研究、③新制度派理論による教育実践の同質化と多様性の分析、という3つの方向性でまとめ、それぞれ学会発表、論文投稿を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究初年次と2年目の予定していた5ヵ国の現地調査が出来なかった。今年度は2か国において現地調査を行う予定である。また、今回の研究内容も含めた書籍を執筆中であり、その英文校正費に支出する。
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