研究課題/領域番号 |
20K02605
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
奥田 久春 三重大学, 高等教育デザイン・推進機構, 特任講師(教育担当) (30535373)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 中等教育修了資格 / 校内評価 / 探究的な学習 / 地域的調和化 / 共通性とローカル化 / SOLOタキソノミー / 各国の相互作用的な学び合い / 教育借用理論 |
研究実績の概要 |
今年度は、ニュージーランドとPSSC(太平洋後期中等教育資格)を実施していた大洋州島嶼国の後期中等教育のカリキュラムの相違点と共通点に焦点を当てて分析、調査を進めた。ニュージーランドはこれら島嶼国に教育制度やカリキュラムに影響を与えた歴史があるため、島嶼国がニュージーランドの試験制度の借用から脱却し、PSSCを実施することで、どのような相違点が生じ、どのような共通点が島嶼国にも継続してみられるのかを明らかにするためである。 また、PSSCから島嶼国独自の試験制度に切り替えてから、島嶼国間においてどのような相違点や共通点が生じているのかにも焦点を当てて分析、調査を進めた。この際、PSSCには参加していなかったが、大洋州島嶼国では存在感と影響力を有するフィジーの後期中等教育のカリキュラムも含めて比較分析を行うこととした。 これらの調査のため、ニュージーランド、フィジー、トンガにて現地調査と情報収集を進めた。フィジーでは後期中等教育修了資格試験のPrescription(カリキュラム)、トンガにおいても同様のシラバスを入手することができた。ニュージーランドでは、ナショナルカリキュラムの到達目標や後期中等教育資格であるNCEAの到達度スタンダード、実際の授業事例からどのように探究的学習が行われるのかを分析し、カリキュラム学会33回大会にて口頭発表を行った。また、オークランドの中等学校を訪問し、授業計画や実践上の工夫を聞き取り調査を行った。 その成果とフィジー、トンガ、サモアの後期中等教育修了資格試験での校内評価のシステムとシラバスの相違点、共通点の分析は継続中である。一方でトンガとサモアではPSSCを継承しつつもそれぞれのナショナルカリキュラムに合わせた相違点があることを見出せた。また、SOLOタキソノミーを用いたカリキュラムという共通点と調和化について分析、考察を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
地域的調和化について、①後期中等教育の制度運用、②カリキュラムと修了資格試験のシラバス、③高等教育機関への進学行動にわけて比較分析をする枠組みを構築することができた。これらに関し、既に収集している資料の分析を継続して進めているところだが、主に②と③の資料を更に収集必要があること(サモア、トンガ以外)、比較分析による共通性と相違点に関する考察に必要な政策文書やデータを収集する必要がある。 このように、やや遅れている理由としては、ようやくコロナ感染症拡大による渡航制限が緩和されたことでニュージーランド、フィジー、トンガでの現地調査を実施できたが、追加資料の収集や本調査はまだ実施できていないからである。また収集できた資料の分析の端緒についたばかりである。 しかしながら、本調査のための足がかりは構築できたこと、調査対象者と電子媒体を通じて情報収集が行えるようになったこと、未訪問の調査先についても連絡調整が可能になったことから、遅れを挽回できるよう進めている。更にオークランド大学教育・社会活動学部のTanya Samu上級講師と共同研究を進めることとなり、サモア、トンガ、フィジー以外の島嶼国情報や調査結果を共有することとなった。このことで、本研究の更なる発展にも繋げられている。 ①については概ね明らかにできつつあり、その成果は拙著「オセアニア島嶼国サモアなどでの後期中等教育修了資格」『オセアニア諸国の高等教育への接続と社会的公正』(学事出版)において執筆し、刊行することに繋がった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度を最終年度として、トンガでの本調査、サモアとフィジーでの追加資料の収集、バヌアツでの調査を行い、収集した各国のカリキュラムと修了資格試験のシラバス、高等教育機関への進学行動の情報やデータの分析を進める。現地調査は8月、9月、また2月を予定している。 その他のツバル、キリバスについては上述のオークランド大学のTanya Sam上級講師に調査を依頼し、その結果を共有することとしている。またソロモン諸島については電子媒体を用いた情報収集を行い、可能であれば現地調査を予定する。 これらの調査結果はTanya Samu氏のレビューを通じて精査し、国内や海外の学会でも論文として発表するよう進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度まで新型コロナ感染症拡大による渡航制限のため、ニュージーランド、サモア、トンガ、フィジーなどでの現地調査が行えなかったため、研究に遅れが生じていた。当該年度にようやく、渡航制限が緩和されたためニュージーランド、フィジー、トンガに調査に赴けたが、本調査と追加資料の収集、また未調査地であるバヌアツなどの調査も行う必要があるため、次年度使用額が必要となった。 次年度を最終年度として、これらの現地調査のための渡航費、現地調査に掛る諸経費、および学会などでの研究成果の発表にかかる経費として使用を予定している。
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