2023年度はアンケートやインタビューの結果についてさらに分析を行った。とくに量的な分析では教員免許更新制に対する評価の規定要因を属性の違いなどによって検討した。また、制度の廃止をめぐる教員の意識などについても分析を行った。また、これまでの分析結果をまとめ、制度の成立から廃止に至る総括的な検討を行った。さらに、制度廃止以後の各学校段階での対応などについても検討を行った。 分析の結果、制度の廃止後もなお教員は研修などを重い負担と考えており、受動的に制度の改革を受け止めていることなどが指摘された。こうした状況に対処し、自律的な教員を実現するために次の2点を指摘した。まず、トップダウンシステムからの離脱である。日本の教員の特質の一つとして、伝統的に自律的で継続的な学びが行われてきたことがある。教員免許更新制の廃止は押しつけられ強制される学びではなく、自律的な学びを実現する重要な機会になる可能性があろう。次に、教員免許更新制成立の背景にもなった教員に対するネガティヴ・キャンペーンからの離脱である。「教員の資質低下」という教員批判ではなく、日本の教員を魅力的な存在にすることが求められよう。 以上のような研究の成果はその一部を第29回台湾教育社会学会にて招待講演として報告した。また、制度の成立から廃止までの総括、および現時点での廃止の影響をまとめた。その成果を報告書の一部として発表の予定である。また、2024年度の台湾教育社会学会等でも総括的な分析結果を紹介するとともに、日本教育社会学会、中国四国教育学会などでも成果を報告するとともに、あらためて分析結果をまとめ、発表することを計画している。
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