研究課題/領域番号 |
20K02614
|
研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
酒井 朗 上智大学, 総合人間科学部, 教授 (90211929)
|
研究分担者 |
伊藤 秀樹 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (80712075)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 就学の社会学 / 教育への包摂 / 困難を抱える子ども |
研究実績の概要 |
2021年度は調査計画に沿って小学校低学年の子どもを持つ保護者へのサーベイ調査の2回目を実施した。2021年度は休業期間がなく、幼児教育修了後すぐに小学校に就学しており、2020年度との比較を行うことができる。2021年度も、首都圏ならびに関西圏に住む小学校等に通う1年生の子どもを持つ保護者(2100名)を対象としてWeb調査により行った。調査時期は2021年5月末~6月である。 2020年度に実施した第1回目のサーベイについては、コロナ禍において小学校就学を迎えた子どもたちの休業中の様子、保護者が子どものことで困ったことや心配だったこと、再開後の子どもの様子と保護者の学校への要望に注目してさらに分析を進め、学会報告ならびに論文として刊行した。 分析から明らかになったことは以下の諸点である。①休業中の子どもたちは家で過ごすことが中心の生活となった。子どもには「いつもと違う」生活が続き、イライラしたり、怒りっぽくなったり、甘えるようになったり、急に泣き出したり、不安を口にする姿も見られた。②保護者は子どもの心身の安定を図ろうと努めたが、多くの保護者は学校休業が子どもの心理面や身体面に及ぼした影響を感じ、特に学習面で不安を感じていた。③保護者の多くが学校からの情報の提供や共有を求めていたが、教師と日常的にやりとりする機会が少なく、小学校の様子が分からないことに戸惑っていた。④「暮らし向きが苦しい」と回答した保護者は子どもと話をしたり、一緒に体を動かす時間をとったり、食事のバランスを心がけることが難しい傾向が見られた。子どもの心理面の不安定さ、体力の低下を感じる保護者の割合が多かった。 このほか生活保護世帯の子どもの就学についてケースワーカーに対するインタビュー調査を実施した。さらに、小学校の特別支援学級に入学した子どもをもつ保護者に対するインタビュー調査も並行して実施した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度も当初はコロナ禍によりフィールドワークは困難であったが、昨年度と同様に先行してサーベイを実施することができた。また後半は現地に出向いて関係者に対するインタビュー調査も可能になり、多くのデータを収集することができた。このため(2)と評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
第一に2回のサーベイ調査の結果を分析することにより、コロナ禍による一斉休業を経ての移行過程と通常の移行過程との比較を踏まえて、それぞれの時期の移行に見られる困難の特質を明確化する。 第二に、貧困家庭で暮らす子どもや障害を持つ子どもなど社会的に被害を受けやすいと考えられる子どもの就学の過程に見られる特徴や固有の困難に関して、関係者に対するインタビュー調査を進めるとともに、収集されたデータに基づいて分析を深めていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2021年度もコロナ禍により、予定していたインタビュー調査が年度途中までできず予定よりも少ないケースしか実施できなかった。このため、次年度送りとした。 次年度は、当初の計画に基づいてインタビュー調査を順次実施していく。その実施、ならびにデータのテープ起こしのために、次年度送りにした予算を使用する。
|