研究課題/領域番号 |
20K02614
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
酒井 朗 上智大学, 総合人間科学部, 教授 (90211929)
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研究分担者 |
伊藤 秀樹 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (80712075)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 就学の社会学 / 教育への包摂 / 困難を抱える子ども |
研究実績の概要 |
2022年度は、2021年度に実施した小学校の特別支援学級に通う子どもを持つ保護者へのインタビュー調査に基づいて、保護者や子どもが就学をどのようなものとして経験したのか、彼らの生活は就学によりどのように変化したのか、それは通常学級に通う子どもや保護者とどのように異なるのかについて分析した。シュッツの生活世界論に基づく江原の「生活世界の分化」の概念を採用し、人々はそれぞれの分化された生活世界において共有された知識に基づいて、自分の経験をナラティブとして紡いでいくという視点から分析した。調査対象者は、首都圏の公立小学校にある特別支援学級に1年生から子どもを通わせている母親7名である。 調査対象者の就学に関する話は多くの場合、出生時からの長い時間の経過を辿る「長い語り」となっていた。保護者は子どもの出生時や1歳半くらいの時期からの様々な経験から小学校就学までを繋げて語った。彼らは早期から子どもにあった施設や学校を探索して回り、あれこれ悩んで選択していた。また、その過程で保護者は、子どもの障害に関して専門家の診断を受けたり、専門家に相談するなどして、様々な知識や情報を獲得していた。 そして、こうした生活世界を構成していった保護者にとって、子どもが幼稚園や保育所を修了して小学校の特別支援学級に就学していく過程は多くの場合滑らかなものとして映っていた。彼らは就学直前の生活から就学後の生活に至る短期的な変化にはあまり触れなかった。ただし、彼らは特別支援学級を選んだことを受け容れながらも、その選択が子どもの将来を狭く限定することになりうることを懸念していた。 このほか、イギリスに住む保護者を対象として、同国での小学校への就学過程に関するインタビュー調査を開始した。こちらについては来年度も継続して実施したうえで、分析を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は今年度が研究期間の最終年度であったが、コロナ禍により当初予定していた調査のうち、「諸外国における就学の過程」に関する資料収集がやや遅れている。イギリスにおける保護者調査が2022年度からようやく開始されたが、まだ資料収集が不十分であるため次年度も継続して調査を進め、最終的に調査結果をまとめる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度はイギリスにおける保護者調査と就学に関する資料収集を年度の前半で終えたのちに、研究全体の総括を行い、研究成果の発信にむけて図書刊行を視野に進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、外国での就学状況に関する資料収集が遅れており、そのために予算が使用できずに次年度使用額が生じた。次年度はこれらの調査の実施に使用する予定である。
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