研究課題/領域番号 |
20K02621
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研究機関 | 帝塚山学院大学 |
研究代表者 |
土田 陽子 帝塚山学院大学, 人間科学部, 教授 (30756440)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 高等女学校 / 同窓会組織 / 教育事業活動 / ジェンダー / 歴史社会学 |
研究実績の概要 |
本研究は、公立高等女学校(以下、高女という)と官立女子高等師範学校の同窓会組織に焦点を当て、1)戦前期においてどのような「教育事業」を運営していたのか整理し、2)それらの「教育事業」が戦後教育改革期を経て、いかなる要因によって維持/廃止されたのかを実証的かつ具体的に解明することを目的としている。 3年目にあたる2022年度は、これまで収集してきた史料と文献のうち、大阪府立大手前高女と兵庫県立神戸第一高女(以下、兵庫県一女)の同窓会に焦点を当てて整理・検討し、すでに分析済みの京都府と和歌山県の公立高女同窓会の「教育事業」活動と比較検討を行った。その結果、大阪府と兵庫県は、京都府と和歌山県の事例と非常に似通っている点と、独自の事業展開を見せていた点が指摘できた。似通っていたのは、1つに「交友・親睦」「母校支援」「社会奉仕」活動を行っていた点、2つに「教育事業」活動において4府県いずれの高女にも、卒業後に在籍できる「花嫁学校」的な家政系の講習所や学園が存在した点である。独自の事業展開を見せていたのは、大手前高女の金蘭会による私立金蘭会女学校(後に高女)の設立・運営と兵庫県一女の欽松会による欽松学園の設立・運営である。ただし金蘭会による高女運営は設立から20年後の1925(大正14)年までであった。その後、金蘭会高女は金蘭会から独立し金蘭会高女同窓会の経営となる。この背景に何があったのかは現時点において把握できていないため、今後の課題に残された。また、兵庫県一女の補習科から発展した欽松学園は、学校経営が戦後継続できなかった京都や和歌山の例とは異なり、戦後に学園が復活し1990年代半ばまで運営されていた。以上の結果は「公立高等女学校の同窓会組織による教育事業活動とその展開」という題目で関西教育学会第74回大会にて報告を行った。またこの報告内容をもとに同学会年報への投稿を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ようやくコロナ禍による行動制限も落ち着きを見せ始めたが、これまでの遅れが影響し、史料収集作業が予定通りに進んでいない。また、予定していた同窓会組織への聞き取りの手続きも難航しているため、研究の進捗にやや遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も引き続き、1)戦前期においてどのような「教育事業」を運営していたのか整理し、2)それらの「教育事業」が戦後教育改革期を経て、いかなる要因によって維持/廃止されたのかを解明するため、研究対象である公立高等女学校同窓会と官立女子高等師範学校の史料と文献を収集・整理・検討する。研究計画に従い、今年度は岩手県、栃木県、埼玉県立高女同窓会の史料と文献収集にあたる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の行動制限の影響から、遠方の史料調査が後回しになっていたため、岩手県の盛岡高女、栃木県の宇都宮第一高女、埼玉県の浦和第一高女の史料調査にかかる予定であった旅費の執行ができなかった。今年度はこれまでの遅れを取り戻すべく、史料収集・文献調査を行う予定である。
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