研究課題/領域番号 |
20K02623
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研究機関 | 国立教育政策研究所 |
研究代表者 |
廣田 英樹 国立教育政策研究所, 生涯学習政策研究部, 総括研究官 (80402650)
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研究分担者 |
本田 由紀 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 教授 (30334262)
白川 優治 千葉大学, 大学院国際学術研究院, 准教授 (50434254)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 教育と仕事 / 教育とスキル / PIAAC / ミクロデータ / 標本調査法 |
研究実績の概要 |
研究初年度である本年度は、PIAACのミクロデータを分析するための基礎となる以下の活動を行った。 ①PIAACのミクロデータを構成する1328項目の要素の具体的な内容の検証 ②文献調査(PIAACのTechnical Report、PISAのAnalysis Manual、標本調査法の理論書等) ③標本調査法の理論に基づく関数を組み込んだRのSurvey Packageを用いた試験的なデータ分析(複数の説明変数を用いた重回帰分析とロジスティック回帰分析を実施した。) PIAACのミクロデータを分析する上で特に必要とされる操作は、①アセスメントのスコアに関係する統計量を求める際に10個のPlausible Valuesを用いること、②統計量の標準誤差を計算する際に80個のReplicate Weightsを使ったJK法を用いることの2点である。実際にこれら2点を条件づけた計算を行うとOECDの公表値と同様の統計量が得られるが、JK法を用いた標準誤差の算出には手間を要する。なぜJK法を用いるのか、標本調査法の理論の理解が必要である。PIAACは、標本抽出段階の層化や集落抽出、調査実施後の回収状況を踏まえた事後層化という複雑なプロセスに基づいてウェイトを算出しており、標準誤差を求める際もこれらを反映した計算が必要となる。しかしJK法を用いることで、複雑な計算を一律な計算方法で代替し、なおかつ層化や集落抽出などのプライバシーとの距離が近い情報を非公表とすることも可能となる。このためRのSurvey Packageで最初に調査デザインに関する情報を入力する際も、標本抽出等に関する情報を入力するか、Replicate Weightsに関する情報を入力するかを選択することとされている。①から③の活動を通じてこうした全体的な理解を得たが、これは今後具体的な分析を行う際の基礎となるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海外調査は実施できなかったが、その分統計分析の基礎固めに力を振り向けることができた。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、本格的にPIAACのミクロデータの分析に取り組む。分析を行うにあたっての基本的な問題意識は主に2つある。一つは日本がリテラシーとニュメラシーのスコアが参加国中でトップクラスなのに、なぜ経済的な指標(例えば一人当たりGDPなど)はそれほど国際的に高くない水準にあるのか、そのことに何が影響しているのかという疑問である。もう一つは、ITを活用した問題解決能力のアセスメントに関して、日本の回答者は16~24歳の若年層を含めて、コンピュータ調査拒否とICTコア不合格の者の比率が極めて高いことであり、そのことに何が影響しているのかという疑問である。この2つの疑問を切り口にして、日本の教育と仕事、そしてスキルを取り巻く課題を、他の参加国との比較の視点から明らかにしたいと考えている。なおその際、PIAACのミクロデータからだけでは得られない情報について追加調査を実施することを予定してる。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響を受けて、当初予定していた海外調査が実施できず、今年度も現時点では海外調査の実施は厳しい状況にある。一方で、今年度から新たに香港嶺南大学の荒木啓史助教授が研究協力者として参加することになった。海外調査はPIAACの関係機関が所在するドイツ等のヨーロッパ諸国を想定しているが、コロナウイルスの地理的な感染状況に応じて、海外調査を実施するか、荒木助教授を招へいするか、臨機応変に対応する予定である。
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