研究課題/領域番号 |
20K02634
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研究機関 | 十文字学園女子大学 |
研究代表者 |
山下 倫実 十文字学園女子大学, 教育人文学部, 准教授 (30514799)
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研究分担者 |
加藤 陽子 十文字学園女子大学, 教育人文学部, 准教授 (40409701)
石田 有理 十文字学園女子大学, 教育人文学部, 准教授 (00618168)
布施 晴美 十文字学園女子大学, 教育人文学部, 教授 (00227505)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 夫婦関係 / 育児ストレス / 親アイデンティティ / 育児サポート / 夫婦間サポート / 母親 / 父親 |
研究実績の概要 |
2020年度は父母間の育児サポートの不一致の実態および育児ストレスへの影響過程について共分散構造分析で明らかにする予定であった。分析を実施するにあたって,これまで申請者が行なってきた調査項目に新たに夫婦間の育児サポートを調査する項目を追加し,調査項目を作成・実施することを目指していた。しかし,夫婦間の育児サポートに関する調査項目策定のための前提と考えていた学内研究費を用いた大規模調査面接の実施は,コロナの感染拡大の影響を受けて困難となった。そのため,調査スケジュールに及び調査方法の変更が余儀なくされた。 そこで,本年度はまずは調査の前提と考えていた育児サポート項目作成のために,5名の母親を対象としたZOOMによるグループ面談を実施した。5名の母親を対象としたグループ面談の結果については既に日本発達心理学会で報告している。具体的には,母親は出産後,夫と自分の親としての意識のズレを感じ,夫に育児に対する自発性を期待していることや,母親が日常的に家族関係を維持するための努力をしており,夫に対する気遣いや意識的なコミュニケーションを心がけていることが明らかになった。ここで挙がった夫に対する期待や夫に理解してほしい気遣いなどの具体的な語りは育児サポート項目の作成に役立つと考える。また,これらの語りを前提に,産後3年未満の父親と母親に対して自由記述を主とした夫婦関係に関するWEB調査を実施し,分析に着手したところである。 2021年度については,昨年度の遅れを取り戻すべく,現在得ている父親及び母親(各100名)の調査データの分析を早々に終了し,①育児サポートの不一致の実態および育児ストレスへの影響過程,②親役割の受容を促進する夫婦間サポートの仕組みに関する調査を今年度9月,来年度1月を目途に実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要でも述べた通り,本研究課題を進める前提となる大規模調査面接がコロナの感染拡大の影響により実施できなくなってしまった。調査対象者が乳幼児を子育て中の父母ということもあり,感染拡大下で集合し,面接を行うという形態での調査実施は,調査協力者の安全を考えると非常に困難であった。そのため,本課題の進捗状況としては項目作成のための質的調査は終了しているものの,育児サポートの不一致を測定する尺度の作成と産後3年未満の夫婦300組を対象とした調査が実施できておらず,やや遅れている状況にある。 ただし,今後もこの状態が続くと考え,調査規模を縮小しつつ研究が遂行できるよう計画を練り直し,調査実施を目指している。実際,既述の通り,対象者は限定的であったもののすでに5名の母親を対象としたWEB面談については調査・分析ともに終了しており,日本発達心理学会で発表済みである。この研究で得られた父親と母親の親としての意識が育まれる過程の違いや,母親が父親に期待する自発的な育児の詳細を調査に活用していく予定である。 また,出産後3年以内の父親,母親に対する自由記述を主とするWEB調査も済んでおり,現在分析中である。このWEB調査の「子どもに対してしてほしいこと」「自分に対してしてほしいこと」「これは父親の役割,母親の役割と決まっていること」で得られた自由記述を精査し,夫婦間サポートの項目作成を行う予定である。 さらに,予定しているペアデータの分析については,産後の夫婦関係に関する調査を再分析し,昨年度の日本社会心理学会で発表を行っている。そのため,本研究課題においても,問題なくペアデータの分析を進めていくことができると考える。 以上をふまえると,調査の実施はやや遅れているものの,その準備は滞りなく進んでおり,今年度は本研究課題の目的に沿った調査が円滑に進められると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には,2020年度,2021年度に予定していたWEB調査を計画通りに進める予定である。まず,育児サポートの不一致の実態および育児ストレスへの影響過程について今年度9月までに実施する。また,2021年度に予定していた第1子出産後の夫婦に対する半構造化面接については,今分析しているデータから得られる知見の結果を見ながら,実施が必要かどうか判断する。そのうえで,来年度の1月までに夫婦間サポートと親役割の受容に関する質問紙調査を実施し,親役割の受容を促進する夫婦間サポートの仕組みについて明らかにする予定である。 本研究課題に若干の遅れがあり,今年度もコロナ禍で研究を進めていくことになる。そのため,もし上記の計画がうまくいかない場合,2020年度,2021年度に予定していた調査を1回にまとめて実施することも考えている。その場合には,夫婦に参加していただくWEB調査の調査方法をより信頼性の高い方法に変更したり(同じ場所に来ていただいて,それぞれ別室で回答する方法),分析後に,親になる過程で有効だった夫婦間サポートに関する半構造化面接を実施するなど,研究の質が落ちない工夫をする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染拡大のため,学会が全てオンライン開催となり,想定していた旅費が発生しなかったため,未使用額が生じた。また,コロナ禍で出産1年未満の子どもを育てている夫婦に対面による面接を行うことができず,本研究課題の前提となる質的研究が大幅に遅れた。そのため,質問項目を作成したうえで実施予定だったWEBによる質問紙調査を実施することができなくなり,その分の予算を使用することができなかった。このような事態となり,関連する書籍も購入することができず,まだ使用していない。 令和3年度の9月までに1回,令和4年度の1月までに1回WEB調査を実施する予定としており,令和2年度分に使用していない調査費用については令和3年度に予算執行する予定である。それと関連して,研究を進めるための資料を購入する必要がある。学会については,今年度もオンライン開催が増える見込みであり,計画通りにいかない可能性がある。 そのため旅費については,今後の学会開催方法次第ではあるが,科研費申請基準にのっとり研究費に振り分けできる部分は,他学会への参加費等に使用し最新の知見を集める,研究者との打ち合わせや専門的知識の供与を受ける,調査の分析結果を裏付ける質的調査を実施するなど,研究遂行のさらなる助けとなるよう使用する予定である。
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