研究課題/領域番号 |
20K02645
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
保坂 和貴 秋田大学, 教育文化学部, 講師 (60624153)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ごっこ遊び / 想像力 / インプロ / シアターゲーム / 演劇 / 幼児・児童 |
研究実績の概要 |
本研究では、ヴァイオラ・スポーリン(Viola Spolin)の思想・哲学に基づき、幼児期・児童期の子どもが遊びを想像的・創造的に営むことに資するシアターゲーム・プログラムの開発を目的とする。 舞台での演技力のトレーニングとして生み出されたシアターゲームを、子どもが実践することで、ごっこ遊びをはじめとした幼児期・児童期の遊びの活動にどのような影響や変化が現れるのかを検討する。また、それらシアターゲームの根底にある思想を探究することで、保育者・教育者の遊びの援助について検討する。 研究初年度である2020年度は、幼児期のごっこ遊びとスポーリンのシアターゲームの活動の共通性と差異について検討した。幼児期のごっこ遊びは、子どもたちのモノの扱いや発話によって、「どこで(場所)」、「だれが(役割)」という構成要素が即興的に生成されては変転し、それが結果として思いがけない展開をもたらしていくという特徴がある。シアターゲームもストーリーを生み出すことが目的ではなく、「モノを扱うこと」、「他者に応答すること(follow)」といった具体的な身体的行為に焦点化させることが、結果として思いがけないことの「創発」やそれにともなうストーリー展開を生み出すことになる。このように、ごっこ遊びの流れ、ゲームの流れが、思考や「物語(narrative)」に基づくことによってではなく、具体的なモノへの行為、他者への行為として展開されるところに共通性があり、それが活動に即興的な展開、「ひらめき」をもたらすことを分析・考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ごっこ遊びとシアターゲームの構造の共通性を踏まえ、シアターゲーム・プログラムを幼児・児童期の子どもに実践することで、ごっこ遊びと類似する展開が見られるかどうか、予備調査を実施するとともに、シアターゲーム・プログラムの系統化を予定していた。しかしながら、研究代表者の異動およびcovid-19の流行により、県境を跨ぐ移動・往来が困難となった。また、研究協力を依頼していた幼稚園・保育所(北海道旭川市)についても、関係者以外の訪問ができない状況となった。その結果、試作版のシアターゲーム・プログラムを実施することができず、データの収集を行うことができなかった。次年度については、感染状況を鑑みながらプログラムの試行およびデータ収集を行うとともに、新規の研究協力園を開拓して必要なデータを収集する。 一方、Web会議システムを活用したワークショップが開催されるようになり、スポーリンに関わるワークショップが国内で開催されたり、海外のワークショップを受講できる機会が増えた。2020年度は、シアターゲームの正確な普及に尽力するゲイリー・シュワルツ(Gary Schwarz)のワークショップに参加する機会を得た。それによって、シアターゲームの説明だけからでは理解が難しい「ノーモーション」「フォーカス」等の考え方を学び取ることができた。加えて、リモートの環境でも可能なシアターゲームが存在すること、そして即興演劇を実施できることが明らかとなったため、それらの知見を活用してシアターゲーム・プログラムの開発に臨むこととする。
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今後の研究の推進方策 |
スポーリンのシアターゲームは、「思考」に頼ることなく、具体的な他者やものとの関わり合いから思いがけない展開を紡いでいくことを可能にするトレーニングである。それらが目指すのは最終的に舞台の上の想像的な世界を生み出す技能を育てることである。一方、構造が類似しているとはいえ、ごっこ遊びはそれ自体楽しむことが目的である。幼児期・児童期の子どもがシアターゲームを実践するとき、日々の遊びとどのような異同が生まれるのかを明らかにする必要がある。それを踏まえた上で、日々の遊びの展開をより想像・創造豊かなものとするゲームのプログラム開発につなげる。以下、本年度に引き続き2つの側面の研究を推進する。①幼児期・児童期の子どもを対象としたシアターゲームプログラムの実践と評価、②シアターゲームにおける思想的・哲学的背景の探求:一般的に流布している「インプロ」とスポーリンの重要概念の相違について。 ①については、研究協力園(幼稚園・保育所)に加え、放課後児童クラブとの研究協力を視野に入れる。児童期(小学校低学年)の子どもへのシアターゲームの実践を推進する。感染症拡大の状況を鑑み遠隔会議システムを用いたシアターゲーム・プログラム実施も計画する。 ②については、ゲイリー・シュワルツやアレサ・シルズなどのスポーリン・シアターゲームを継承している実践者をもとに、その理論的示唆・思想的背景を探究するとともに、「インプロ(即興劇)」それ自体も新たな展開が生まれてきているため、その流れを集約しまとめることを課題とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
covid-19の感染拡大のために、当初計画していた研究協力機関での予備調査・プログラムの実施をすることができなかった。またそれらプログラムの実施と分析についてスーパーバイズを研究協力者に依頼する計画であったが、それらも遂行できなかったため、旅費・謝金を次年度に繰り越した。 次年度は、感染症の動向を見据えながら、新たな研究協力機関でのプログラム実施と分析および遠隔対応の準備等に、繰越金を活用し、研究の充実に努めたい。
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