研究課題/領域番号 |
20K02647
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
嶋田 容子 同志社大学, 研究開発推進機構, 助教 (60422903)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 音環境 / 保育 / 小集団 / 遊び |
研究実績の概要 |
吸音材設置による音環境と行動の変化:複数の協力園で吸音材の取り付けを実施し、音環境の変化および保育者・子どもの行動の変化を分析した。A園では、ホールで0.7秒前後の残響時間が示されたため、吸音材の取り付けを実施した。吸音材は、当該園の保育デザインや動線との調和を考慮し、金沢工業大学土田研究室により作成された。残響時間は0.5秒程度に減少した。吸音材設置前と設置後のそれぞれ5日間、朝の自由遊びの開始から終了までを固定ビデオで撮影し、撮影されたビデオから、1分ごとに動的遊び集団・静的遊び集団等への参加人数をカウントした。その結果、音環境の改善後、動的な遊び集団がより長く持続する傾向がみられたが、有意な結果は得られなかった。結果は同志社大学赤ちゃん学研究センター紀要に掲載した。また、B園では、天井付近に吸音材を設置し、残響時間は0.4秒台に減少した。当該保育室での預かり保育の間、固定ビデオで室内を撮影した。そして、遊びの小集団参加・徘徊等の人数を同様にカウントした。結果、音環境の改善後、子どもの「徘徊」が有意に減少した。結果は、日本赤ちゃん学会ラウンドテーブル等で発表した。 実践者との協働活動:保育者らからは、一人一人を尊重する保育への意識変化の中で、音の視点で静けさを創るは重要であったこと、また、2歳頃の子どもに静かな小空間が必要であることも指摘された。子ども一人が入れる程度の静かな小空間での子どもの行動が次年度の協働研究課題となった。(緊急事態宣言発令のため中断中。) その他に、徳島・石川・大阪などの保育施設で講演や音環境に関する助言をおこなうアウトリーチ活動をおこない、同時に保育者から実践的なアイデアを得た。乳児室と幼児室との境界に、突っ張り棒とレース布のみで吸音材を取り付けた例、既製品も導入して全園の環境改善をおこなう例など、多様な主体的取り組みの事例を導くことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
吸音材の導入の行動への影響に関する研究は、おおむね予定通り実施することができた。金沢工業大学の協力によって迅速かつ精確な音響測定をおこない、日本音響学会でも成果を報告した。音環境への介入に用いた吸音材に関しても同様に、音響学的にも保育実践上のデザインとしても適切なものを用いることができ、このことが成果につながった。ただし、A園の音環境改善に対応する行動変化に関しては、有意な結果が得られなかった。これは対象空間を使う遊びのパターンが非常に多岐にわたり、調査での環境変化に関連したパターン変化を抽出できなかったためと考えられる。自然な保育における行動変化の抽出は、今後の検討課題である。B園のように空間的に制限された環境や、集団活動やそれに類する遊びの時間帯であれば、比較的結果を得やすいと考える。 音環境の主観的評価については、当初予定した環境のチェックリストではなく、スクリーニングの意味の強い質問紙に変更した。金沢市幼児教育センターの協力により、市内全園を対象に調査をおこない、問題園を抽出することができた。結果から調査フィールド候補が得られたと同時に、地域への成果還元に結びついた。今後、この手法を他の地域にも適用し、保育の音環境に関する状況調査とより広いアウトリーチができると考えられる。これは当初の予定以上の成果であった。 実践者との協働については、北陸・関西・四国など各地の約13園との間で、環境改善と共同研究、あるいは環境改善のための視察と助言などをおこなった。また、自治体や私立幼稚園協会の保育者研修会などを通じたワークショップで、多くの保育者に音環境の見直しを促した。また、個人的にzoom開催した活動報告会などを通じて、各地の保育者・関係者と広く関係を結ぶことができた。これらのことから、実践者との協働やアウトリーチに関しては、当初の予想以上に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでの協力園の系列園において①保育室の音環境の変化による一斉保育の変化、および②にぎやかな音環境内に設置した小空間(1人分の空間)の2歳児による利用の頻度や内部での行動について、調査をおこなう。ただし、調査者の異動により、前年度とは異なり当該園と地理的に離れており、コロナ禍で他府県移動が困難な状況が続くため、状況によっては調査内容を簡素化し、保育者に調査実施を依頼することも検討する。これまでに得られた結果をまとめ、海外の学術誌への論文掲載を目指す。 また、これまでに環境改善や助言をおこなった園の実践について事例を取りまとめ、保育学・子ども学などに向けた成果報告を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大により、大阪府ほか各地の園で予定していた調査や研究会の多くが中止となった他、学会や学術研究会も中止やオンライン開催となり、旅費の執行がほとんどなかった。同じ理由から、ビデオデータの分析や調査の助手として、園に出入りする第三者を謝金雇用することも難しくなった。協力園での環境介入数が減少したことで、吸音材を始めとする物品の購入も次年度以降に延期となっている。 次年度は、感染状況が落ち着き次第、各地の園の訪問と調査を再開するため、金沢・福岡・徳島等への旅費、国内外研究会等への出張旅費、各園での音環境設定費(吸音材購入など)、分析謝金等が発生する見込みである。状況が変わらない場合についても、可能な範囲で園に材料と機材を送付し、これまでに共同研究者として活動している園の保育者の手で調査をおこなう。この場合、旅費は発生しないが、音環境設定費・送料・分析謝金を執行する。
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