研究課題
福島第一原子力発電所の事故による放射能汚染は、福島の特に乳幼児の生活と遊びを大変脅かすものだった。長期間外遊びを制限された子どもが、制限撤廃後も土や虫に触れず恐れるなどの症状を、我々研究チームは「自然剥奪症候群」(Nature Deprivation Syndrome)と名付けて世界に発信し続けている。最終年度の成果としては、福島、山形、宮城の3つの園からの実践報告を受けて、震災後から継続研究してきた集大成を尚絅学院大学総合人間科学会第8回大会において2件発表したことである。「大震災による保育抑制とそこからの回復にみる質的発展」と題して、その1では当時の様子を振り返ってもらったインタビューを行い、テキストマイニング分析を行った。ちょうどコロナの時期でマスクや遊びに制限がかけられて、子どもの「体」の動きが悪くなった、原発事故の時と「似る」状態になっていると考察された。その2では、新しく開設された園で子どもが泥まみれになって遊んだり、福島から避難してきた子どもとその家族へ篤い支援を行ったり、汚染されて食べられない果実をめぐって子どものたくましく育つ力が発揮されるなど、震災を通して新たな姿が見られ、また、どの現場でも保育者たちに新しい気づきが与えられていることが観察・考察された。子どもの心と体を回復するのは、やはりありのままの自然であり、また、保育者の豊かな感性と柔軟に応答する力であることが分かった。この発表の土台になった研究は、アテネ で2022年に行われたOMEP世界大会で“Confronting Radiological Contamination From the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant In Early Years Childcare and Education:Data Based Caution vs. Emotion Based Overreaction”と題して発表した。
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