研究課題/領域番号 |
20K02674
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
小田倉 泉 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (10431727)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | レット症候群 / 聞かれる権利 / 非言語的コミュニケーション / ユマニチュード |
研究実績の概要 |
本年は、子どもの権利尊重の保育実践について検討すると共に、レット症候群の患者(以下「レット症児・者」)の非言語的言語表出の実態と共に、それらの表出の意味とそれらを聞き取ることの不可欠性を、主に国連子どもの権利委員会による「一般的意見第12号 聞かれる権利」を基にまとめた。また、レット症児の「聞かれる権利」を保障する実践について、レット症児とその支援を行う保育者との関わりの質をユマニチュードの理論を元に検討した。 レット症候群の診断基準の一つに「音声言語コミュニケーションの喪失」」が挙げられているが、レット症児・者は「見つめること」、身体言語等の方法でコミュニケーションをとることが報告されている。K.ハンター(2013)によると、レット症候群では、脳の発語を司る部分には損傷が無いことを複数の研究者が示唆しているが、動きのコントロールや神経回路の問題により言葉の表出が困難である。しかし突然言葉が出ることも報告されており、これは「言語は彼女たちの中にある」ことの証拠である。従って、彼女たちの内にある言語を周囲の援助者がいかに引き出すかが重要な課題である。 一方、受容言語が表出言語を上回っていることも一貫して報告されている。しかし、レット症児・者の理解力に対する理解の欠如が、本人とその家族に困難をもたらしていることも多いという。レット症児・者自身による手記にも「わかっているということをわかってもらう」ことがいかに重要であり、困難であるかが繰り返し記されている(霧原澪,2016)。 「一般的意見第12号 聞かれる権利」(2007)は、非言語的表現による「意見表明」の尊重の不可欠性、意見表明が困難な子どものための様々な配慮や考慮の重要性について言及している。幼い子ども・障害のある子どもの「聞かれる権利」の実現のための状況・環境の整備、支援者のコミュニケーション技術の向上が極めて重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の感染予防のため、当初計画していたインタビューと観察調査が大幅に延期となったことに加え、種々の事情から、レット症候群の患者の保護者とのインタビュー調査ができなくなってしまったため。
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今後の研究の推進方策 |
調査方法及び対象者について再検討することで、レット症児との関わりの具体的技術の検討を進める。また、インタビュー調査は新型コロナの影響を受けることの無いよう、オンラインでの実施に変更する。
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次年度使用額が生じた理由 |
〇次年度使用額が生じた理由:新型コロナウイルスの感染防止のため、学会等がオンラインとなるなど、旅費が2年連続で不要となり、また観察調査を実施できなかったことから、起こしの作業などの人件費の執行ができなかったため。 〇使用計画 ・人件費:対象者2名へのオンラインによるインタビュー(8月~9月)。起こし作業(9月~11月)(雇用予定人数:1名)。・旅費については、現在オンラインの学会が多いため、執行予定は未定。・物品費:観察調査のための固定カメラ2台(三脚等固定の器具を含む)を購入予定。観察調査が可能である状況になった時点で購入。
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