研究課題/領域番号 |
20K02674
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
小田倉 泉 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (10431727)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ユマニチュード / 人間として尊重する / ヤヌシュ・コルチャック |
研究実績の概要 |
「ユマニチュード」の哲学はケアを受ける患者の人間としての尊厳を尊重することである。ユマニチュードを開発したジネストらは、人間としての尊厳が尊重されるとは、人が相手から受ける行動の一つひとつの中にある行為の意味によって実感するものであることを示し、尊重の意味が伝達される行為と、非尊重の意味が伝達される行為とを明確に区別している。認知機能が低下した患者であっても、他者から人としての尊厳を尊重されているか否かを明確に理解し受け取っているという事実を、ユマニチュードの実践は明らかにしてきた。このようなユマニチュード哲学には、「人間」として他者を尊重するという、ケア、保育、教育において重要でありながらも、今日見落とされやすい基本姿勢がその土台に据えられている。 レット症候群の子どものケアに携わってきた保育者が「病気や障害を見るよりも、まず子どもとして見る」と語っているが、疾患をもつ子どものケアにおいても、まず子どもを子どもとして、また子どもを人間として尊重することが基本となる。それは、ユマニチュードのような人間としての尊厳を尊重する技術を実践する上で、保育・教育に携わる者が有していなければならない理念である。子どもを人間として尊重するという観点において、重要な思想を展開した教育実践者に、ヤヌシュ・コルチャック(1878-1942,Janusz Korczak[本名Henryk Goldszmit])がいる。コルチャックは小児科医、また孤児院長としての教育実践から、人間として子どもを見ること、また人間として尊重することを主張した。彼はその主張に基づき、子どもが子どもであることを保障されるための「子どもの権利」の尊重を展開していく。本年度はコルチャックの主張について主著『子どもをいかに愛するか』を基に分析し、子どもを人間として見、人間として尊重することの意味をまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ禍のため、教育現場への参与観察が叶わなかったことや、併せてインタビュー等が計画通りに進められなかったこと、さらに、保護者へのインタビューを中心となる分析対象としていたが、コロナ禍も要因となり保護者の協力が得られなかったこと、これらの理由から当初想定していたようには研究を進めることが出来ていない。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、レット症候群の子どもをもつ保護者の会にアプローチすると共に、レット症候群の子どものケアに携わった保育者へのインタビューを実施し、最終年度の研究としてまとめていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍からの影響の為、研究計画が滞ったこと、そのため研究内容に変更が生じたことから、経費を執行できなかったため
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