本研究は、「民主保育連盟」(1946(昭和21)年10月結成、1952(昭和27)年12月解散)に関する先行研究の到達点を確認するとともに、それらを乗り越えるための課題と方法を明らかにするものである。 「民保」の歴史的役割の分析・検討は、当事者であった浦辺史による総括的な研究、それを受け継いだ宍戸健夫による思想史研究、浦辺らによる証言を中核としてまとめた松本園子の研究など、社会福祉運動史研究ではなく、保育運動史研究として行われてきた。しかし、そうした先行研究は、通史の一部分であったり、幅広い活動を展開した中のある部分だけが特化されたものであったりという状況で、「民保」の歴史的意義を問うことは未だできていないのが現状である。 今回の筆者二人による共同研究は、保育史研究の中で遅れが著しい運動史において、その研究成果の蓄積が最も乏しい戦後改革期に光を当てるための試論となる。特に、占領軍(GHQ)による民主化の指導のもと、各種運動が花開いた時代状況において、官側ではなく民間側からどのような保育構想が出されていたのかを描き、その歴史的特質(意義と限界)を問いたいと考え、「民保」による運動へと着目した。 本研究では、そうした問題意識に基づき、「民保」に関する先行研究の到達点を確認するとともに、それらを乗り越えるための課題と方法を明らかにする。そして、その作業により、戦後改革期の保育に関する研究上の礎石を築きたい。 また、今後の研究課題とその方法として、1)〈戦時経験〉への注目、2)他団体・組織との連携・協力から見たその運動の分析・検討、3)運動の「全体史(社会史、心性史)」という方法の導入を提起している。
|