研究課題/領域番号 |
20K02687
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研究機関 | 静岡産業大学 |
研究代表者 |
佐藤 寛子 静岡産業大学, 経営学部(磐田), 准教授 (10823700)
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研究分担者 |
中井 真吾 静岡産業大学, 経営学部(磐田), 准教授 (30795381)
吉田 茂 別府溝部学園短期大学, 教育学部, 特任教授 (60829349) [辞退]
島田 達生 大分大学, 医学部, 客員研究員 (80080555)
坂本 智則 大分大学, 医学部, 助教 (40894514)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 母指中手指節関節過伸展症 / ハサミ操作 / 母指中手指節関節不安定症 / 援助法 |
研究実績の概要 |
本研究は母指中手指節(以下、MP)関節が不安定であることから、母指操作の不具合や困り事を抱える「母指MP関節過伸展症(不安定症)」軽度罹患者の実態と援助法について、幼児を対象に実施したものである。幼児期に保育者や保護者の理解と適切な援助が本症罹患幼児には必要である。 これまでの調査では、母指MP関節過伸展角度の縦断的調査において、歳児、性別、左右の平均値、最大値において有意差がなかったことから、幼児期の手指の発育、発達と当該関節伸展角度の関係は低いと考える。幼児期は当該関節伸展角度を制御する種子骨が未形成であるため、伸展角度は大きい傾向にある。ハサミ操作の観察では、4歳で過伸展だった児が、5歳では過伸展位を取らないハサミ操作を獲得していた(伸展角度は過伸展のまま)。 以上より、幼児の手指活動における当該関節の状態を以下に分類した。1.当該関節伸展角度≦10°且つ、手指活動でも過伸展位を取らない、2.当該関節の伸展角度>10°だが、手指活動では過伸展位を取らない、3.当該関節の伸展角度>10°且つ、手指活動でも過伸展位を取る。3の場合は真性の過伸展症(独力では安定性を獲得できない)の可能性があり、卒園前の保育者や保護者の援助が必要であろう。今後はハサミ操作における具体的な援助方法について検証する。 共同研究者と当該関節を構成する組織について、猿の子どもの標本を用いた研究を進めている。弾性繊維と膠原繊維を染色法により染め分け、電子顕微鏡画像と照合させることにより、当該関節の周辺組織の詳細について検討している。 共同研究者による大学生を対象とした当該関節の伸展角度と手指の巧緻性の調査も実施している。今後は幼児と大学生のデータを比較し、本症の実態につて検討を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ禍の渦中に採択、開始した研究であったため、部外者である調査者が2年間、保育所やこども園に立ち入ることができなかった。そのため、広域調査は本年から始める。園長による縦断的調査は、関係者の協力により、昨年1月より現在に至るまで続けている。 同様にMRI画像の撮影については医療従事者がコロナ対応で時間が取れず、進展していない。そこで研究代表者が光学と電子顕微鏡を併用した母指MP関節周辺組織について研究を進めているところである。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は研究期間の最終年度である。コロナ禍で調査が2年間延期となったため、まずは母指MP関節伸展角度の広域調査を進める。MRI画像データについては、共同研究者がコロナ患者対応のため、進捗は不明である。今後の社会情勢を見守りながら協力していく予定である。以上より、研究データを本年度中に論文にまとめることは難しいと判断し、本年度はデータ収集、来年度は論文発表を目指したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍にて直接保育所等での調査が実施できなかったため、令和4年度に延期した。使途は交通費と学生アルバイト、協力園への謝礼、謝金が中心である。学会発表や論文が来年度になる可能性が高いため、予算の執行を延長せざるを得ない状況である。 母指MP関節過伸展の幼児のMRI画像の撮影についてはコロナ禍の影響を受け、進んでいない。当該園児が卒園するので、縦断的調査で新たな被験者を準備する必要がある。研究協力者と連絡を取りながら、状況を判断したいと考えている。
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