研究課題/領域番号 |
20K02688
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研究機関 | 愛知工業大学 |
研究代表者 |
藤井 勝紀 愛知工業大学, 経営学部, 教授 (10165326)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Fujimmonの発育曲線 / ウェーブレット補間モデル / Phase angle / 臓器 |
研究実績の概要 |
Scammonが分類した4つの発育パターンについての客観的な分類基準は示されなかった.そこで,これまでに藤井はFujimmonの発育曲線では3つの発育パターンに設定したが,本質的な分類基準は何も議論してこなかった.そこで,特に,一般型発育パターンはヒトの諸属性の中でも多くの臓器が分類されていることから,一般型の分類基準となる指標を検証しようとした.一般型発育パターンに分類される諸属性,例えば内臓,形態諸要素や身体的指数の発育現量値に対してウェーブレット補間モデルを適用し,発育速度曲線の記述からMPVを導く.MPVを算出できたことにより,各諸属性の発育現量値曲線がシグモイド型曲線を示すことを明確化した.そして,シグモイド曲線を示す諸臓器間でMPV年齢を比較し,性差と同性間でのバラツキについて検討した.その結果,性差については,女子の諸臓器におけるMPV年齢は男子のそれより早い傾向が示されたが,すべての臓器が早いわけではない.また,同性間でのMPV年齢のバラツキについては成熟度の関係が示唆される.そして,内臓以外で一般型発育タイプを示す形態諸属性である身長,体表面積,身体組成等の発育をウェーブレット補間モデルで記述し,体表面積や内臓発育はMPVが示されており,シグモイド曲線を客観的に保証できる一般型発育タイプと考えられる.さらに,本研究の1年目では,Phase angleという近年注目されてきた栄養指数にたいしてウェーブレット補間モデルを適用し,その加齢変化傾向を解析した結果,やはり,他のBMI,体表面積,身体組成と同様にMPVを検出し,シグモイド曲線であることが明確となった.Scammonは身体的指数等は全く扱ってこなかったので,BMI,体表面積,身体組成,Phase angleと言った諸要素がシグモイドを示す一般型のパターンに属することは新知見として提唱できる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目は,Fujimmonの発育曲線を提唱することはできたが,ヒトの発育システムの一般化および標準化を検証するには,曲線モデルを正確に記述するための情報が希少である.したがって,Scammonの発育曲線理論が現在まで都合よく利用されてきた背景には,現在のような臓器収集が極めて困難な状況が影響してきた経緯は否めない.しかし,如何に臓器収集が困難であったとしても,90年経過した理論を都合よく利用することが現代科学として許されるのであろうか.Fujii(2017)は限られた臓器の情報でFujimmonの発育曲線の可能性を提示し,3タイプの曲線モデル(神経型,リンパ型,一般型)を定量的に記述できたが,詳細な解析には至らなかった.そこで,本研究の1年目ではScammonが一般型に分類したタイプについて,内臓および形態の発育について再度解析し,一般型モデルとしての妥当性を検証した.一般型は4タイプモデルの中では分類される諸属性が多いのである.要するに,体重発育が一般型として分類されることから,内臓のほとんどは一般型であり,さらに,体型を構成する筋や骨,血管等も一般型である.体重は頭部も含むが,頭部の脳重量に関わる頭骨の大きさや重量は神経型に属する.よって,体重発育の一般型パターンは主に頭部を除く身体の大きさや重量に依存していることになる.したがって,一般型として分類される標準的なパターンを明確にすることが必要である.しかし,Scammonはその点については何ら客観的な基準を示していない.このような背景から,一般型としての発育モデルの一般化,標準化を検証した.さらに,一般型として今まで議論したことがない身体指数の加齢変化を検討した.特に今回は,BMI,体表面積,体脂肪率以外のPhase angleの加齢変化を解析し,一般型パターンを示すMPVの検出が確認された.
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今後の研究の推進方策 |
本研究の本質的な目的は,定量的な標準発育システムモデルとして,新たにFujimmonの発育曲線を提唱することであり,そして,Fujimmonの発育曲線を活用して,運動能力発達曲線モデルを神経型と一般型発育パターンの混合型として捉え,より神経型に近い発達パターン,中間発達パターン,より一般型に近いパターンの3パターンを構築することである.3パターンの運動能力発達曲線に関して,各運動能力発達曲線間で相互相関分析をし,定量的発達曲線モデルとして最終的に確立することである。本研究の1年目では,新たな発育モデルとなる曲線としてFujimmon曲線を構築することを試みた.この試案を検討するために,一般型,神経型,リンパ型の3パターンごとに臓器の成就率を算出し,3つのタイプをまとめて,その成就率に対してウェーブレット補間モデルを適用する.そして,一般型では形態内蔵型タイプと生殖型タイプに分けて,ウェーブレット補間モデルを適用し,導かれた曲線モデルに対して,形態内蔵型タイプと生殖型タイプを同一タイプと考えるための客観的根拠をロジスティック曲線モデルに求めることにした.形態内蔵型と生殖型の発育は基本的には思春期ピークを有することが研究代表者によって明確にされている.この思春期ピークが生殖型が一般型に属する決め手となったわけで,本研究1年目では,一般型の検討がなされた.2年次以降は,身体機能発達モデルを神経型と一般型の混合モデルを模索するために,神経型タイプである脳重量の成就率と一般型タイプである内臓重量の成就率を平均化した数値にウェーブレット補間モデルを適用する.また,実際の50m走,立ち幅跳び,ボール投げ等の発達記録に対してウェーブレット補間モデルを適用し,そのモデルパターンを検討する.これら成果を国際学会で発表することはもちろん,然るべき雑誌に投稿していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染のために、学会がキャンセルされるなり、リモートに切り替わるなどしたために、学会出張が激減した理由が大きい。特に、国際学会がキャンセルかリモートになると、出張費は大幅に減額される。したがって、次年度はデータ解析のための謝金や国際誌への投稿のための費用に少し経費を充てたいと考える。また、ウェーブレットdrawingシステムが新型コロナ感染の影響で初年度に購入できなかったために、次年度に購入するための費用にも充てたいと考えたため。
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