運動能力の発達やトレーニング理論を議論するとき,必ずScammonの発育曲線が引用される.しかし,Scammonの発育曲線は90年以上前に提唱された理論であり,コンピューターの存在しない時代で構築された理論である.科学万能の現代において,90年以上経過した理論がはたして有効なのか当然検証されるべきであろう.前述したように今日まで,子どもの発育発達を理解するのに必ずScammonの発育曲線が引用されてきた.その背景には,子どもの発育現象を理解するのに非常に都合の良い理論だからである.つまり,これ以上理解しやすい理論がなかったのである.しかしながら,科学的な検証のない理論が果たして有効なのか.やはり,客観的な検証はされるべきであろう.そこで,Fujii[4]はScammonの発育曲線を再検証した後,新たにFujimmonの発育曲線を提唱した.Fujimmonの発育曲線に基づけば,運動能力発達曲線モデルは一般型タイプと神経型タイプの混合タイプモデルとして仮説することができる.その仮説を検証するために,運動能力の発達プロセスに対してウェーブレット補間モデルを適用してその速度曲線の挙動を解析し,運動能力の発達パターンに対して一般型タイプか,神経型タイプに近い曲線パターンかを検証した.その結果,敏捷性や走能力のような発達パターンは神経型タイプに依存した曲線を示し,筋力系や瞬発系能力のような発達パターンは一般型タイプに依存した曲線を示した.女子における運動能力発達のパターンは男子に比べれば神経型タイプに依存する傾向が強かった.したがって,本研究によって新たに一般型タイプへの依存度が高いパターン,神経型タイプへの依存度が高いパターン,さらにその両タイプの標準的な発達パターンの3タイプの曲線を提唱することができた.
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