研究課題/領域番号 |
20K02689
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研究機関 | 追手門学院大学 |
研究代表者 |
長岡 千賀 追手門学院大学, 経営学部, 准教授 (00609779)
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研究分担者 |
吉川 左紀子 京都芸術大学, 文明哲学研究所, 教授 (40158407)
松島 佳苗 関西医科大学, 医学部, 講師 (60711538)
加藤 寿宏 京都大学, 医学研究科, 准教授 (80214386)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 自閉スペクトラム症 / 非言語コミュニケーション / 作業療法 / マルチモーダル / 相互作用 |
研究実績の概要 |
自閉スペクトラム症(ASD)児の療育技法として,子どもの社会的適応の可能性を伸ばすことを目標として,子どもと養育者の情緒的やりとりのある相互作用を通して施される包括的アプローチが注目を集めている。人と人の相互作用において,愛情や愛着の表出は一般に,相互に視線を送ることや身体接触することなどと関連するが,ASD児はそれらを不快と感じる場合があることが示唆されている。では,上述の療育においてどのような相互コミュニケーションが有効であろうか。 本研究では,包括的アプローチを取り入れて施されるASD児の作業療法を研究対象とし,視線,身体接触,言葉がけなどを定量的に分析することにより,ASD児の適応的行動を引き出すのに有効なコミュニケーションの特徴を明らかにする。さらに,上記検討の結果を分かりやすく説明する映像コンテンツと,それを用いたプログラムを制作することを第2の目的とする。 本年度は,視線,身体接触,言葉がけなどマルチモーダル分析の手法の開発を進めた。分析事例は,ASD児2名に対して,熟達したセラピスト(熟達者)2名と,経験の浅いセラピスト(非熟達者)2名が,それぞれ施行したセラピー4事例であった。ビデオ撮影されたものを分析した。セラピストと子どもの対人距離を,接触,近距離(児の手の届く範囲),中距離(約2メートル以内),遠距離に分類した。近距離のときの2者それぞれの身体の向きと顔向きを記録した。結果から,熟達者事例の方が非熟達者事例よりも,近距離と遠距離にいる時間長の割合がそれぞれ高く,また近距離のときにセラピストと子どもが相互に顔を向き合わせている時間の割合が高いことが示された。またこの分析手法の有効性について検討した。今後,ほかの多くの事例においても同じ結果が得られるか検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究では,熟達したセラピストと経験の浅いセラピストによる作業療法を複数事例撮影し分析対象としている。作業療法は医療機関で行われることが多いが,2020年からの新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響で,データ収集が不可能な状況が続いている。現在のところはこれまでに撮影した数事例を用いて検討を行っているが,事例数が少なく十分ではない。
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今後の研究の推進方策 |
現在手元にある数事例のビデオを用いて分析を行いながらも,データ収集可能になり次第,データ収集を行う。加えて,別なアプローチによって,熟達したセラピストと経験の浅いセラピストの比較をすることについて検討を進めている。このアプローチは,セラピストが子どもの何に着目してどのように計画を立てるかを明らかにすることを目指すものである。実験で子どもの一人遊びの動画をセラピストに視聴させ内観報告を求め,その内容を質的に分析することによって,熟達による相違を明らかにする。ここから得られた結果も,本研究における映像コンテンツやプログラム作成に活用することができる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では作業療法を複数事例撮影することが必要であるが,作業療法は医療機関等で施行されることが多く,2020年からの新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響で,医療機関でデータ収集が不可能な状況が続いている。そのため,現在のところは当初予定していた金額を用いずに検討を進めている。しかし,次年度以降に検討を進める上で,当初予定の金額を必要としている。
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