本研究の目的は、保育・幼児教育(ECEC)政策におけるグローバルな影響関係が深まる中で、北欧のスウェーデンおよびノルウェーが保育者の養成・研修をどのように改革してきたかを明らかにすることである。特に、「ホリスティック型」と言われている北欧諸国のECECが、新自由主義的な政策や、乳幼児のケアと教育に学校的なアプローチを導入する「学校化」にどのように対峙し、養成・研修の制度や内容に具体化していったのかを明らかにする。 1年延長した最終年度となる本年度は、昨年度に続き、スウェーデンおよびノルウェーで現地調査を行い、保育施設および保育者養成を行っている大学を訪問した。また、現地の研究者と複数回にわたる継続的な議論を行い、論点の整理・分析を行う中で、以下の点が明らかになった。1つ目は、「学校化」の流れに関連して、スウェーデンとノルウェーの保育カリキュラムおよびペダゴジーが、「学び」と「遊び」の捉え方において異なっていることである。この違いは、保育者養成にも表出している。2つ目は、ノルウェーでは保育現場に標準化されたプログラムやアセスメントが導入されつつあるが、保育者養成がそれらに対していかに批判的な視点を提供しうるかという文脈で、保育研究の新しい方法論を探求する動きがオスロメトロポリタン大学の研究者らを中心に見られることである。 成果の一部は、北欧教育学会(Nordic Educational Research Association Conference 2024)で発表し、2024年年度には、日本保育学会において発表することが決まっている。また、書籍の編著・分担執筆の機会を得たり、6月と10月には市民セミナーに登壇する機会を得て、広く一般にも研究成果を発信した。
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