研究課題/領域番号 |
20K02704
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研究機関 | 熊本県立大学 |
研究代表者 |
坂本 達昭 熊本県立大学, 環境共生学部, 准教授 (80710425)
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研究分担者 |
細田 耕平 仁愛大学, 人間生活学部, 講師 (60734803)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 食事支援 / 自己肯定感 / セルフエスティーム / 調理 / 自信 / 非対面式 |
研究実績の概要 |
子どもの貧困への対策として,子ども食堂等による食支援の取り組みが充実してきた。しかしながら,食事提供により空腹を満たすことができても,支援を受ける子どもたち自身の成長や自立にはつながりにくい。本研究では,子どもの成長につながる「新たな食支援」の方法を実証する。新たな食支援では,「料理スキル」と健やかな成長の土台となる「自己肯定感」の向上を目指している。 2020年度は,新型コロナウイルス感染症の感染拡大により対面による食支援が困難となったため,計画を一部変更して,調理に対する自信と自己肯定感(以下,Self Esteem: SEとする)を高めることをねらいとした非対面式によるプログラムを実施し,その効果を検討した。対象は小学4~6年生(29名)とし,全5回のプログラムを実施した(前後比較デザイン)。内容は,参加者が自宅で調理動画を視聴し,調理することである。希望者には食材を無料提供した。プロセス評価は,各回終了時に参加者に動画のわかりやすさ,調理の難易度等をたずねた。第5回終了後には,保護者にも調査を実施した。プログラムの効果は,プログラム参加前後の調理に対する自信とSEの変化から評価した。SEの評価は,先行研究により信頼性と妥当性が確認された尺度(得点範囲8~32点)を用いた。 プロセス評価において,参加者と保護者の評価は良好であった。プログラム参加前より参加後は,自分で料理をうまく作る自信があると回答した者が多く(P=0.003),「ガスコンロや包丁を使わずに,自分一人でいろいろなおかずを作る」ことの自信度も向上した(P<0.001)。SEの平均値(標準偏差)は,プログラム参加前22.9(5.2)よりも参加後25.0(4.4)が高値であった(P=0.002)。 今後の課題は,対照群を設けてプログラムの有効性を検討することである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時は,参加者を集めて調理や会食を行う対面式の食支援を計画していた。しかし,コロナウイルス感染症の拡大により,大人数を会場に集めての調理や会食は実施が難しくなった。 そうした中,海外における非対面式のプログラムを参考に,非対面式の食支援を検討・実施し,その有用性を確認した。対面式から非対面式へと方法は変更したが,「料理スキル」と健やかな成長の土台となる「自己肯定感」の向上に寄与する食事支援を検討・実施することができ,おおむね計画通り研究を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度は単群による前後比較デザインで研究を実施したため,評価には課題が残った。今年度の研究は,昨年度実施した非対面式のプログラムを一部改変し,参加者の調理に対する自信と自己肯定感がどのように変化するかを,食材提供のみを行う対照群と比較して評価することを目的とする(準実験デザイン)。なお今年度の研究は対象者を増やすため,研究分担者と連携して2地区(熊本県および福井県)で実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初,学会発表のための旅費を計上していた。コロナウイルス感染症の拡大により,学会が中止(または紙面開催)となったため旅費の支出がなくなった。そのため次年度使用額が生じた。
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