研究実績の概要 |
本研究では,9ヶ月児健康診査においてASDの特性が示された子どもの保護者に, 生後10ヶ月から始められる保護者トレーニングを実施し, 標準化検査を用いて介入の効果を検討した. 令和5年度においては,18ヶ月時に保護者の希望に応じて個別相談を実施し,24ヶ月時の事後評価を行った.具体的な評価項目は以下の6項目とした:適応行動(Vineland-II), 発達指数(KIDS乳幼児発達スケール), 自閉症チェックリスト(日本語版M-CHAT), 自閉スペクトラム症評定(PARS-TR), 育児ストレス(PSI-SF育児ストレスインデックス), 社会的妥当性. 対象者はASDリスク群17名, 定型発達群10名で,介入の結果,適応行動の総合標準得点平均は, 生後10ヶ月時91.06(SD=10.16)から24ヶ月時80.43(SD=14.72)と下降し, その差は定型発達群より大きかった.また, コミュニケーション, 社会性, 運動スキルは全ての時期でASDリスク群の平均得点が定型発達群を下回っており, これらの項目はASDの特性を示唆するものであることが注目される. 発達指数は, 適応行動とは異なり, ASDリスク群は24ヶ月時全ての項目において平均を上回っており, 同月齢の子どもの平均以上の発達が示唆された. 自閉症チェックリストおよび自閉スペクトラム症評定は, 両群の間に有意な差はなかった. 保護者の育児ストレスは, ASDリスク群,定型発達群ともにすべて50パーセンタイル以下であり特に高い値とはならなかった. 社会的妥当性はアンケート調査により評価したが, ASDリスク群定型発達群の間に有意な差はなかったものの, ASDリスク群の保護者の方が, 介入内容の実施度および本トレーニングの他者への推奨度が高かった. 今後は事後評価を完了させた後,論文としてまとめ,投稿予定である.
|