本研究は、「子どもが災害発生時に命を守る危機管理力を日常的な遊びや生活の場面の中で身につけること」を目的とし、危機管理実践力育成のための子ども防災教育教材の開発を行った。全国の保育施設を対象に防災並びに防災の備えについて質問紙調査を行った。園長、副園長に回答を求めた。結果、5県を除く都道府県の保育所より回答を得られた。得られた回答より、各保育施設での取り組みの防災への現状と課題が明らかとなった。総合的な知見として各保育施設において「防災意識は高いこと」「十分な備蓄は整えていること」「定期的避難訓練以外でも散歩の機会を通じて園児達と避難経路を実際に歩いて確認していること」などの防災についての取り組みの実際が明らかとなった。一方、課題として現在の人員体制では発災時に「対応できない」との回答が全体の約60%を占めていること、災害に対する危機意識が約94%と高い反面、保育士への防災教育の機会が少ないことが明らかとなった。また子ども達に求める意識や行動では「大人の話を聴くこと」が第一とされた。これらの結果をふまえ、分担研究者並びに研究協力者間で協議を行ない、成果物としての防災絵本には、子どもの年齢に関係なく、わかりやすいこと、保育施設のみならず家庭内で活用できる形態であること、内容が一目でわかること、興味を持つ形式であることを網羅した防災絵本が望ましいという結論に至った。頁数を多くしない、仕掛け絵本、読み聞かせ側が自由に防災を語れるよう言葉を用いない、聴くという行為を伝える、また発災の状況を理解しやすい構成を立案した。装丁とデザインは研究代表者が折り紙を使用し切り絵で表現した。また成果物は子育て家庭支援センターの保育士複数名に協力を求め使用感や形体、色、デザインに対する助言により完成させた。今後、調査協力施設並びに子育て支援センターに配布予定である。
|