研究課題/領域番号 |
20K02714
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研究機関 | 京都女子大学 |
研究代表者 |
瓜生 淑子 京都女子大学, 発達教育学部, 教授 (20259469)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 育児休業制度 / 0歳児保育 / 休業取得のジェンダー・アンバランス / 3歳児神話 |
研究実績の概要 |
育休取得が母親とその子どもに与える影響(効果も含む)を検討した。 その結果を紀要論文にまとめ、以下の3点を今回、明らかにした。1)「父親の取得義務化」案まで提案されるなど、現在の政策重点が、男性の取得率の低さに焦点が移ってきている状況を把握した。しかし、その中で、育休中の部分就労を可能にする案や分割取得がより柔軟にできる案などの検討も始まっており、それを男性取得の際の便宜にせず、「取得による長期の職場からの離反」を防ぐ方策として議論されるべきことを指摘した。2)厚生労働省の21世紀出生児縦断調査の公表データを使用して、母親の就労継続への育休制度の寄与について検討した。その結果、全体として、母親の就労率は出産で半減すること、特にそのことは、パート・アルバイトの母親で大きいことを示した。3)育休をめぐる議論であまり注目されていない点である、育休取得者がいる職場での「代替」措置について、2000年代前半と後半では大きく状況が異なり、実質、代替措置が取られないままになっている状況を人事院のデータの分析から示し、比較的対処がされていると言われてきた公務員でも、いわば育休が“人減らし”の一端を担っている実情を指摘した。 ジェンダー問題を取り扱った共著(印刷中)で、「女性の生きづらさ」という観点から育児休業制度の取得が取得率や取得期間から見て母親に偏った制度である背景に「3歳児神話」にかかわる言説があることを論じ、心理学・保育学研究こそ、育休制度にかかわるこうした問題や0歳児保育の評価の課題についてもっと向き合うべきことを指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
育児休業制度がもつ問題点については、様々な角度から指摘することができた。 しかし、この問題に心理学・保育学の立場からかかわるとき、もっとも大きな課題は、0歳児保育をどう考えるかということである。この点については、紀要論文・共著で、これらの分野の研究が十分向き合えてこなかったことを指摘した。一方、自身の実証的研究が進められなかった。その一つの理由は、研究を計画していた病院小児科での2歳児健診がパンデミックの影響で廃止に追い込まれたことによる。またもう一つは、二次分析を予定していた厚生労働省の縦断調査の個票データの借用の手続きが、年度初めに申請をしたもののなかなか完了せず、ようやく年度末の入手となったことによる。
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今後の研究の推進方策 |
1)勤めていた小児科での実証的研究が叶わぬことになったため、調査会社に調査対象(乳児・養育者)の獲得を依頼した上で、乳児期の集団保育経験がその後の子どもの発達や養育者のwell-beingにどのような影響を及ぼすのかを分析する。 2)借用が叶った厚生労働省の「21世紀出生児縦断調査」の個票データについても、同様の観点から二次分析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
実証研究を予定していたが、パンデミックの影響で、対面の実験研究が全く行えなかったため、一定額の予算を次年度送りとした。対面研究は今後もしばらく難しいとみられるので、調査会社に調査対象(乳児・養育者)の獲得を依頼した上で、乳児期の集団保育経験がその後の子どもの発達や養育者のwell-beingにどのような影響を及ぼすのかについての研究費用にあてる。
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