研究課題/領域番号 |
20K02726
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
山本 容子 筑波大学, 人間系, 准教授 (40738580)
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研究分担者 |
岩井 宏暁 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (30375430)
伊藤 哲章 宮城学院女子大学, 教育学部, 准教授 (50735256)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 環境教育 / 環境倫理 / ディープ・エコロジー / ネイチャーライティング / 生活知 / 生物多様性 / 植物生理 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、我が国独自の自然風土で伝統的に育まれてきた環境思想を基盤とする「生活知」と、生物教育の生態学分野の「科学知」とを統合することにより、持続可能な社会の構築を目指した日本型の生物多様性保全教育プログラムの開発・実践を行い、生徒の環境倫理意識の向上を図ることである。そのために、①日本独自、さらには地域独自の自然風土で伝統的に育まれてきた環境思想を基盤とする里地里山における「生活知」の視点の明確化、②植物の多様性について、その生命現象のメカニズムとなる植物生理と関連づけて認識する「科学知」の視点の明確化、③「生活知」と「科学知」とを統合するネイチャーライティングの要素から得られる視点の明確化を行い、それらの視点をもとに④日本型の生物多様性保全教育プログラムの開発、実施、評価を試みることを目的(最終目標)としている。 2020年度は、第一の目的について、日本の幼・小・中・高校生の環境意識調査を行うに当たっての、調査問題作成の枠組みとなる文献の調査を進めている。第二の目的については、里地里山でよく見られる植物の発生及び植物生理を踏まえた季節に応じた観察方法について、研究分担者との意見交換を行っている。第三の目的については、ネイチャーライティングおよびネイチャージャーナリングの先行研究の収集・分析を行い、日本理科教育学会全国大会および日本科学教育学会年会において発表した。さらに第四の目的については最終年度に実施予定であるが、プログラム開発に当たっての教授アプローチの検討のため、過去に中学校理科にて実践したプログラムの質的分析を行い、日本科学教育学会研究会にて発表した。ディープ・エコロジーの視点を導入したプログラム実践により自然との一体感を感じた生徒は、心の安定を感じ、自然を大切にしたいと考え、植物を育ててみたいという生命尊重の心が育成されたことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一の目的については、日本独自の環境思想に関する先行研究の収集・分析、および、日本の幼・小・中・高校生の環境意識調査を行うに当たっての、調査問題作成の枠組みとなる文献の調査を進めている段階であるが、調査問題を作成するにはまだ文献調査が不足しており、予定よりやや遅れている。第二の目的については、里地里山でよく見られる植物の発生及び植物生理を踏まえた季節に応じた観察方法について、コロナ禍にて、具体的な観察方法の検討までは進んでおらず、現段階では、研究分担者と意見交換を行っている状況である。第三の目的については、ネイチャーライティングのみならず、それと関連したネイチャージャーナリングの先行研究の収集・分析も行っており、計画より進んでいる。さらに第四の目的であるプログラム開発については、2022年度に実施予定であるが、その教授アプローチの検討のための、過去に中学校理科にて実践したプログラムの質的分析が進んでおり、予定より早く取り掛かっている状況である。 以上より、計画より早く進行している部分と遅れている部分があるため、総合的に判断すると(2)おおむね順調に進展している、といえる。
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今後の研究の推進方策 |
第一の目的については、2021年度も引き続き文献調査を行う。具体的には、日本独自の環境思想に関する先行研究については収集まではできているので、分析を進める。また、日本の幼・小・中・高校生の環境意識調査については、海外の環境倫理調査に関する文献を引き続き調査し、調査問題を作成し、調査を実施する。その際、倫理面での配慮を欠かさず行う。 第二の目的については、研究分担者との協議を重ね、校庭及び里地里山でよく見られる植物の発生及び植物生理を踏まえた季節に応じた観察方法の具体的な内容を詰めていく。プログラム実践校の選定、そして実践校の校庭のフィールドにおける植生調査については、コロナ禍の状況次第と考えられる。 第三の目的については、ネイチャーライティングの先行研究の収集・分析が進んでいるので、今後はそれらの成果をもとに、学校教育への導入視点について明確化していくこととする。 第四の目的については、第一、二、三で明確化した視点をもとにプログラム開発を行うため、2021年度の後半から具体的な検討に入る。2021年度には、現地での一次資料の入手と聞き取り調査を行う予定であったが、コロナ禍のため、現地調査は厳しい状況であるので、Web上での情報収集を進めることとする。また、2022年度には、プログラム開発、実践、評価を行う予定だが、新型コロナの感染拡大によりプログラム実践が難しい可能性がある。その場合でも、プログラム開発を行い、その内容を中等理科教育の理科教師に評価してもらうなど、プログラム実践以外の方法にてプログラムの実効性について評価していきたい。プログラム実践可能となった場合は、感染防止に留意し、倫理面での配慮を欠かさず行う。 以上の研究から得られた成果は、適宜、理科教育関係の学会にて発表し、学会誌に論文投稿する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度はコロナ禍にて、予定していた学会等への出張ができず、旅費を執行することができなかったため、次年度において学会発表等の旅費に使用する予定である。
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