研究課題/領域番号 |
20K02754
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
溝口 昭彦 岩手大学, 教育学部, 教授 (40779948)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 絵画技法 / 美術科教育 |
研究実績の概要 |
1.2020年に実施した描画材の段階的併用による表現力向上の基礎研究の結果をもとに、色鉛筆・アクリル絵具・油絵具の段階的併用をした授業試案1を、高等学校美術1授業で実施可能な内容に課題解決をして、色鉛筆・アクリル絵具の段階的併用をした授業試案2を立案した。コロナウィルス感染拡大を鑑み2021年1月から3月に高校美術1選択者普通科1年80名を対象に研究計画より授業試案2を先行実施した。そのアンケート結果や記録写真をまとめて分析を進めた。 2.授業試案2の多角的検証を進めるため、2021年7月から8月に、岩手県内に2ヶ所の研究協力校において、美術部の活動として、授業試案2を計画時間の1/2である6時間の内容で実施した。制作過程や作品を画像記録するとともにアンケート調査を実施した。合わせて受講者の対象を一般の美術愛好者として授業試案2を高校生の美術部活動と同様の内容で2021年12月に実施した。 3.授業試案2の発展的研究として高等学校3年4名を対象に美術2の授業において2021年9月から10月に実施した。授業試案2は、美術1を想定した12時間で完結する内容であったが、発展性を考慮して24時間で実施した。 4.研究経過の成果発表として、実践研究で制作した作品と画材の段階的併用技法解説パネルを2021年11月から12月、2022年3月に「観察と表現展」として岩手県宮古市と盛岡市の2カ所で展示内容を変えて開催した。 5.上記実践研究の結果のまとめとして「高等学校における絵画表現に関する実践研究報告3 -色鉛筆とアクリル絵具の段階的併用技法導入について-」を『岩手大学教育学部附属教育実践・学校安全学研究開発センター研究紀要第2巻』に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全体計画における2021年度の研究計画では、2020年度の静物画を題材とした描画材(色鉛筆・アクリル絵具・油絵具)の段階的併用技法を導入した授業試案1の実施結果に基づき、高等学校美術1で実施可能な画材の段階的併用技法(色鉛筆・アクリル絵具)による授業試案2の提案及び実施であった。授業試案2の実施にあたって、岩手県内の高等学校美術教員を対象にアンケートを実施予定であったが、アンケート対象を授業試案体験教員に絞り実施して集計した。授業試案2は、2020年度先行実施した高等学校普通科1年生を対象とした実践研究アンケート調査のデータ分析をした。また、授業試案2の改善を進めるため、受講対象や実施環境を替えながら4回の実践研究を進めた。具体的には、高等学校普通科3年生美術2授業、高等学校美術部活動、一般の芸術愛好者体験イベントを対象とした。この対象や実施環境を変える実践研究のアンケート結果と、高等学校普通科1年を対象としたアンケート結果を比較することにより、「描画材の段階的併用による表現力向上の基礎研究」の成果として、今年度進めた色鉛筆とアクリル絵具の段階的併用による授業試案2が、青年期に見られる写実的表現欲求とその未達成感から生じる絵画表現離れを乗り越えるための表現方法になり得るかについて多角的に検証を進めた。調査結果からは、(色鉛筆・アクリル絵具・油絵具)の段階的併用技法を導入した授業試案1は、高等学校の芸術系学科や総合学科で芸術を専門に学ぶことができる環境において有効であり、色鉛筆とアクリル絵具の段階的併用による授業試案2は、当初の仮定通り普通科美術1での有効性が確認できたが、受講生人数や絵画表現への準備状態、実施時間と受講者の知覚と表現に対する肯定感の差異に関しては課題として確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、現在まで実施した授業試案1、2のアンケート結果と映像記録を分析して、研究のまとめと研究内容の普及に努める。研究のまとめとしては、①岩手大学教育学部附属教育実践・学校安全学研究開発センター研究紀要投稿または大学美術教育学会への参加等を計画する。研究内容の普及および実践研究の継続については ②高等学校美術教員を対象とした「描画材の段階的併用技法入門(仮)」編集及び発行 ③ 雑誌を岩手県内美術教員への配布 ④研究協力教員と研究会実施 ⑤ 高等学校や地域美術団体からの要望に応じて、授業協力や技法指導にあたる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度もコロナウイルス感染再拡大により、専門家への調査や学会参加等の県外出張が不可能になった。また、研究成果展については、2回実施したが、規模を縮小したため、旅費や人件費の予算使用が少なかった。繰り越した予算については、次年度に予定している高等学校美術教員を対象とした「描画材の段階的併用技法入門(仮)」の編集・発行及び、研究会開催費用の謝金や旅費、高等学校や地域美術団体からの要望に応じた授業協力や技法指導にあたる場合の旅費や段階的併用技法の必要材料費に使用する予定である。
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