研究課題/領域番号 |
20K02755
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
角間 陽子 福島大学, 人間発達文化学類, 教授 (70342045)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 家庭科教育 / 生活の総合的な理解 / 生活資源の社会的活用 / 他者の生活支援 / 生活課題の解決 / 生活の行為・活動 |
研究実績の概要 |
「生活課題の解決を図る学びと生活の総合性に対する認識」について、昨年度来の各部面で制限を求められる状況での生活を踏まえて実施したプログラム案の効果を検討した。新たに導入した段階である「他者の生活ならびに地域や社会の問題から当事者の生活課題と解決を検討するアクティビティ」では、生活困窮や子ども、ひとり親、環境配慮等の事例が取り上げられていた。生活の枠組み(松村:2020)に基づく分析では「社会保険・社会福祉」や「労働市場」との関係を見出していたものの、多角的な視点によるとは言い難いことから、より丁寧な指導の工夫が必要である。生活の総合性に対する認識の記述を取り組みの前後で比較したところ、問題が発生する原因や現状の分析という側面から、具体的な方法や選択肢、その一環としての生活行動や生活資源等、課題の解決という側面が付与される傾向が伺えた。 生活問題の解決にあたっては、生活資源だけでなく生活の機能という視点からみる必要があるとの理論を踏まえ、新学習指導要領に準拠した教科書における「生活の課題と実践」の事例を分析した。生活の内部での協働事例、生活の外部での支援事例をそれぞれ詳細に検討したところ、テーマが共通していても設定された課題によっては解決の過程における行為・活動と関連する領域で習得する知識及び技能とのつながりが、必ずしも明確になっていなかった。 ①生活の構造を総合的に捉えることの意義、②生活の構造、③生活の行為・活動、④生活の質という4つの項目に整理し、改善を加えた学習プログラムの取り組み前後による効果の調査を継続している。併せて長年、中学校、高等学校の教育現場で家庭科を担当した元教員3名を対象に、家庭科教育実践の専門的立場から上記①~④をどのように捉えているか、書面での意見聴取を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
感染力の強い変異株の出現により新型コロナウイルス感染拡大が収まらず、現地に出向いたり対面しての打ち合わせや調査の困難な状況が続いている。これまでに進めてきたプログラム案が一定まとまった段階で家庭科担当教員へのインタビューを行う予定であったが、家庭内や若年層への感染拡大により対応に追われる学校ならびに教員への調査依頼は控えることとした。そこで対象範囲を豊富な家庭科教育実践の経験を有する元教員に広げたものの、環境整備や技術上の問題からオンラインでの実施がかなわず、郵送による意見聴取となった。
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今後の研究の推進方策 |
試案として開発した学習プログラムの効果を明らかにするために行った調査から得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。 パイロットプログラムに対する家庭科担当教員へのインタビューについては継続して実施する予定であるが、新型コロナウイルス感染拡大の状況によっては難しい場合も想定される。そのため生活課題の解決と生活の行為・活動とを関連させ、これまでに得られた専門的立場からの見解を踏まえつつ、より効果の高い学習プログラムとなるよう改善を図っていく。これを導入した指導計画と家庭科の学習のまとまりにおけるICTを含めた教材の活用について、教育現場での導入をめざした検討を進めることとしたい。検討にあたっては他者への支援や地域・社会との協働する活動を中心に行うが、生徒が自らの生活における課題解決を図る過程で、具体的な生活目標の達成をめざす生活の行為・活動を明確にし、必要となる知識・技能をつなげていく指導についても視野に入れていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文を投稿した会誌が印刷所の手違いで印刷し直しとなり、発刊の時期が年度をまたぐかたちになった。論文投稿の締め切りは年度内であり、併せて論文投稿料も振り込む必要があることから年度内に納入していたが、会誌そのものは同一年度内に納品されなかったため、該当の金額が次年度使用額として生じたという理由による。
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