研究課題/領域番号 |
20K02759
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
小野 學 東京学芸大学, 教育学部, 研究員 (30864590)
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研究分担者 |
松川 誠一 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (20296239)
伊藤 秀樹 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (80712075)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 小学校 / スタートカリキュラム / 子どもの貧困 / カリキュラム・マネジメント / アクションリサーチ |
研究実績の概要 |
2021年度は、貧困、複雑な家族関係、保護者の養育困難などによって複合的な不利を抱えた子どもが多く在籍する小学校をフィールドとして、以下の3点の研究を実施した。 第1に、小学校1年生対象のスタートカリキュラムに関する教材の開発である。今年度は、体育科での運動遊びについての映像教材集と、授業等の中で遊び感覚で実施できる言語発達促進のためのワークシート集を作成し、ウェブサイト上で公開を行った。 第2に、スタートカリキュラムの実施と効果検証である。今年度は、育成を目指す子ども像の明確化、カリキュラム・マネジメントの理念に基づく年間学習計画表と単元配列表の作成、生活環境の構造化、語彙の増加や算数の基礎作りのためのゲームなどを、研究協力校の1年生担任と研究代表者・支援員が協働する形で実施した。さらに今年度は効果検証として、年度初めに標準化された知能検査、年度末に標準化された学力調査を実施したが、年度初めの知能検査に比べて年度末の学力調査では学年全体の平均偏差値が向上しているという結果が得られた。 第3に、スタートカリキュラムのさらなる発展を目指すための理論的検討を行った。具体的には、スタートカリキュラムがコンピテンシーの形成・獲得を目指すコンピテンシー・ベースのカリキュラムとして機能するための要件について、クロス・カリキュラムの考え方をもとに検討した。 第4に、研究協力校でのスタートカリキュラムに関わる支援員へのインタビュー調査と参与観察を継続し、分析を行った。分析からは、小学校1年生への支援員が果たすべき役割として、学習に至るまでや学習の中で抱える子どもたちの困り感やつまずきを取り除き、担任が作り出す授業や学校生活の大きな流れにのっていけるよう子どもたちをエンパワーメントしていくことと、子どもの情報の伝達や周辺的業務の手伝いなどによって担任を支えていくことの2点が導き出せた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルスの感染防止対策のため、一部の運動遊びなど実施が難しいプログラムもあったが、研究協力校の全面的な協力もあり、スタートカリキュラムの開発・実施や効果検証、支援員への調査など、研究を多面的に遂行することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、これまで新型コロナウイルスの感染防止対策のために実施が難しかった体育科での運動遊びのプログラムを実施し、その検証を行う予定である。また、2020・2021年度に開発・実施したスタートカリキュラムについても継続して実施し、その成果について検討していく。これらの点については、研究協力校からの協力が引き続き得られることになっており、研究の推進が可能な条件が整っている。 また、これまでの研究成果についての学会発表・論文執筆を推進していくために、研究代表者・研究分担者との間で意見交換を行う機会を適宜設けていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度も引き続き新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、参加・発表を検討していた学会がすべてオンラインでの開催となり、計画していた海外調査も実施が困難であったため、予定していた旅費の支出がなかったことが最大の理由である。繰越額については、本研究のスタートカリキュラムの内容を熟知しており研究協力校からの信頼も厚い小学校教員経験者を支援員として雇用し、より充実したスタートカリキュラムを実施し多面的な成果の検討を行うために活用する予定である。
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備考 |
これまでの研究成果について、研究分担者の伊藤が、東京学芸大学子どもの学び困難支援センター主催のシンポジウムで報告を行った。 伊藤秀樹,2022年3月19日,小学校入学時のスタートカリキュラムに関する研究開発の観点から,東京学芸大学子どもの学び困難支援センター 令和3年度シンポジウム こどもの「学び困難」とその支援,オンライン.
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