本研究の目的は,高等学校国語科において,「創造的・論理的思考力」を継続的に育成するための学習評価モデルの具体として,言語パフォーマンス評価のあり方を開発することにある。具体的には,本研究では,次の3点についての検討を行うことを目的とした。①「創造的・論理的思考力」の内実とその関連についての具体を明らかにする。②論理論証教育,とりわけ国語科授業における「創造的・論理的思考力」を育成するための学習評価モデルとして,言語パフォーマンスの質に着目し, パフォーマンス評価方法の具体を開発する。③開発した言語パフォーマンス評価方法を実際に試行し,修正していくことによって,高等学校の教育現場で実現可能で,有効なパフォーマンス評価の具体を構築する。 当該年度は,昨年度に引き続き,言語パフォーマンスを焦点化した「めあて」の構築と,その提示による学習者の言語パフォーマンスの意識化についての検証を行った。ただし,言語パフォーマンスの設定が,学習者の学習をパターン化してしまう傾向が存在すること,そのことで学習は習熟するものの,パターン化された学習が展開されるという課題に対して,言語行為のバージョンやバリエーションの広がりを志向した取り組みを行った。バリエーションとして,表現行為に着目し,「話すこと」に限定するのではなく,「書くこと」の学習を取り入れたり,ただ単に「書かせる」のではなく,誰かの意見に対する批評行為を行わせたりすることを中心にした取り組みを行うことにより,学習者自身が論理的な整合性を確認することが可能となった。 こうした取り組みを行っていく中で,学習者は情報の活用の仕方や,論理の形成について意識になる傾向が見られるようになった。一方で,学習評価の基準として,何をどこまで理解したのかの明確な基準(ルーブリック)づくりに関しては,明確な観点を明らかにすることができないままであった。
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