研究課題/領域番号 |
20K02773
|
研究機関 | 川村学園女子大学 |
研究代表者 |
齋藤 美重子 川村学園女子大学, 生活創造学部, 准教授 (60748987)
|
研究分担者 |
佐藤 真弓 川村学園女子大学, 生活創造学部, 准教授 (20825286)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | ケア / ケアラー / ケアラーズサロン / 共生社会 / ヤングケアラー / ケア教育 / インタビュー調査 / アンケート調査 |
研究実績の概要 |
ケアラー研究を家政学・哲学に接合させケアラー周知を行い、ケアの課題に照らした哲学対話的授業プログラム及び社会教育への展開を図るため、本年度行った研究を以下に示す。 第一に、ケアに関する文献調査により、様々な学問分野におけるケア概念を整理し、ケアラー研究の現状と課題を明らかにして論文発表を行った。ケアには多義性・複雑性・社会構造的問題性が存在し,ケアラーが社会的存在として現れるようになったのは1980年代以降であることも明らかになった。ケアは人間の相互行為であり、ケアされる人であるケアドも、ケアする人であるケアラーも、ヴァルネラブルで多様でありすべての人と再定義できた。また、ケアラー研究は近年増加傾向で、特に介護・福祉分野に多くみられたが、ケアラー研究は萌芽期の段階にあることがわかった。 第二に、申請者らが主体となり川村学園女子大学と我孫子市との官学連携により、ケアラーズサロンをオンラインにて2020年9月19日(土)、2020年11月28日(土)、2021年1月23日(土)、2021年3月27日(土)に開催した。このうち1回は若者ケアラーを対象にし、残りの3回はすべての人を対象にした。その結果、我孫子市民へのケアラー周知につながり、ケアラーズサロンに参加した当事者同士がつながり、聴き合い語り合える場になっていることが明らかになった。 第三に、第二で述べたサロンに参加したヤングケアラーを対象に、インタビュー調査を行った。その結果、ケアラーという単語を知らず、自分自身をケアラーと認識していない者、必要とする支援を特に感じていない者がいた。ケアへの気づき・認識という起点が行動を促し、共感という起点が家族や社会への支援を求めるという意識をもたらすことが明らかになった。 第四に、全国3000人を対象に「共生社会に向けた生活、教育」について、Webアンケート調査を実施した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
世界的な新型コロナウイルス感染症拡大・緊急事態宣言等により、ケアラー研究先進国であるイギリスや、哲学対話授業を行うフランス、及び共生やIT教育先進国であるエストニアなど国内外のフィールド調査を行うことができなかったためである。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続きケアラーズサロンを行い、ケアラー周知に努める。 ヤングケアラーインタビュー調査により得た結果をもとに、ヤングケアラーの課題に照らした授業プログラムを開発する。 次に高等学校家庭科および総合的学習の時間において、開発した授業プログラムの授業実践を行う。その結果を分析し、ケアラーの課題に照らした哲学対話的家庭科授業プログラムを公表する。 さらに、web調査の分析結果を論文発表する。開発した授業プログラムはアプリで公表する予定である。 コロナ禍で海外へのフィールド調査ができない場合、国内でのフィールド調査に変更することが考えられる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度新型コロナウイルス感染症拡大・緊急事態宣言等により、国内外のフィールド調査や高校における授業実践を行うことができなかったため、次年度以降に実施したい。そのため、旅費・謝礼については次年度以降、新型コロナウイルス感染症の収束がみえ、安全性が確認された上で使用したい。 また、物品については次年度、授業プログラム開発と資料配布用として、カラー印刷機または拡大印刷機を購入したい。 さらに、アンケート調査の分析のため、パソコンおよびSPSSを購入する予定である。
|