本研究の目的は、次の3点であった。①エコパーク圏における自治体とユネスコスクール加盟校の連携の実態を調査し、協働的な体制を構築するための要件を教育課程編成の観点から明らかにする。②同圏の加盟校における総合的な学習の時間の実態を調査し、ESDを促進するための課題を抽出する。以上の研究の知見を踏まえて、③問題基盤型学習(PBL)を同圏の加盟予定校で試行し、授業方法としての効果を評価する。 ①と②については、単独自治体運営型のエコパーク圏と複数自治体運営型のエコパーク圏に分類して調査し、各学校と市教委及び担当課の協働体制について自治体ごとの特徴を把握した。その結果、単独自治体運営型のエコパーク圏の学校では、複数自治体運営型に比較してESDを推進する協働体制が整備されており、加盟校の総合的学習を中心とした教育課程も充実していた。この研究の一部は、「ユネスコスクールでの生物多様性に関する教育の分析」(日本環境教育学会関東支部年報18巻)で公表している。また、研究論文「単独自治体型ユネスコエコパークにおけるESDの促進要因」を学術誌に投稿し、現在審査中である。 ③については、研究期間中に発生したCovid-19問題の影響で、当初予定していた長野県飯田市遠山地区の学校での問題基盤型学習(PBL)の研究には至らなかった。しかし、当該学校に研究者として積極的に関わり、地域・行政等と協働したESDの推進には大いに貢献できたと考えている。当該学校とは、PBLのような特定の学習方法を介した実践的研究の形はとらず、学校・地域・行政の協働体制に加わる研究者として、アクションリサーチの方法論でESDを促進できた。その研究の成果は、研究報告「地域の持続可能性を主題とした学校と地域の協働的ESDの可能性」として『環境教育』第32巻3号に研究協力者の阿部治との連名で掲載された。
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